鳥栖でJリーグ初のクラスター(感染者集団)が発生した。金明輝(キム・ミョンヒ)監督(39)の新型コロナウイルス感染判明から一夜明けた12日、鳥栖は新たに6選手とトップチームスタッフ3人の陽性を発表。同監督を含めて同じクラブから初の2桁となる10人の感染者を出した。同日開催予定のルヴァン杯広島-鳥栖は中止となり、クラブは当面の活動を自粛。J1では15日のG大阪戦開催が絶望的となり、Jリーグ全体が厳しい状況に追い込まれた。

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Jリーグでついにクラスターが発生した。午後9時半からオンライン会見に出席した鳥栖の竹原稔社長(59)は「佐賀県からクラスターと発表されており、その認識を持っている」と肩を落とした。

この日新たに判明した感染者は9人。名前など詳細は明かされていないが内訳は選手6人、トップチームスタッフ3人。うち選手1人以外は全員が8日の鹿島遠征に同行しており、チームの中心を担っていたのが分かる。のどの痛みや発熱した者はいるが、特段の症状はないという。

10日に陽性判定された金監督と合わせると、いずれも感染経路は不明で、計10人の感染者をわずか3日間で出した。同監督の濃厚接触者3人は陰性となり、逆にそれ以外の9人が感染した。Jリーグで名古屋が計6人の感染者を出したが時期は6、7月に分かれ、感染経路も別々だった。

この日午後に入り、9人のうち先に2人の感染が抗原検査で判明。残る7人が陽性の疑いが強いとされた時点で、Jリーグはこの日開催予定のルヴァン杯広島-鳥栖の中止を決めた。その後に7人の陽性が判明したが、夕方に会見したJリーグ村井満チェアマン(61)は「今後の日程も再考の可能性があると、鳥栖もJリーグも認識している」と話していた。

実際に鳥栖は厳しい状況に追い込まれた。竹原社長は「これ以上、感染を広げないために強固な自粛をしていく」と明言。保健所からは2週間の活動自粛依頼があったといい、当面は全体練習はせず、選手は自宅待機になる。

鳥栖は今月、残り4試合のJ1リーグ戦があるが、安全が担保されていない現状で、15日のG大阪戦の開催は絶望的だ。竹原社長は「試合の可否はJリーグが判断するので一概には言えない」と説明したが、練習できないチームが試合だけするのは非現実的。その後3試合もメドは立たない。鳥栖だけではなく、既に過密日程だったJリーグも追い込まれた。【横田和幸】

◆金明輝監督の一連の状態及び鳥栖の動き

▽8日(土)=J1鹿島戦(午後7時、カシマ=後に金監督の発症日に認定)。朝の検温は36度3分。感染の発表内容は「昼体調不良」から「昼に微妙な違和感を感じる」に訂正。発熱などの症状なし。試合は0-2で敗れる

▽9日(日)=佐賀に戻る。朝の検温は36度4分。コーチングスタッフとマスクを外すなどし、クラブハウスで15分以上のミーティング。倦怠(けんたい)感があり、夜に38度まで発熱

▽10日(月) 高熱から一夜明けて検温で36度4分に。午前練習で指導後に再び倦怠感があり、佐賀県内の病院でPCR検査を実施、午後3時に陽性判定

▽11日(火) 選手34人を含む関係者89人がクラブ独自のPCR検査を受ける。監督の濃厚接触者となったスタッフ3人は保健所主導の同検査で陰性判定に

▽12日(水) 11日から発熱していた選手、スタッフの計2人が抗原検査の結果、陽性判定。2次検査を受けた7人も陽性。ルヴァン杯広島-鳥栖は中止に