20年東京五輪へ、各競技の注目選手を紹介する連載「リオ→東京 継承者たち」。今回は23日開幕の陸上日本選手権(大阪・ヤンマースタジアム長居)でブレークの予感が漂う若手を紹介する。8月の世界選手権(ロンドン)の切符も懸かる今大会は、東京五輪へ向けた新時代の争いの始まり。追い風参考ながら9秒94を出し、注目の存在となった男子100メートルの多田修平(20=関学大)が3強崩しへ、意気込んでいる。

 多田が男子100メートル戦線に風雲急を告げる存在になるかもしれない。10日の日本学生個人選手権準決勝では追い風4・5メートルの参考記録ながら9秒94。日本人では史上3人目、国内では初となる電気計時での9秒台を計測。公認記録範囲内の風となった同決勝では日本歴代7位タイの10秒08をマークし、世界選手権の参加標準記録を突破した。一躍、時の人となった多田は「東京五輪までに9秒台を出したい。日本選手権では表彰台に上がりたい」と桐生、山県、ケンブリッジの3強崩しへ意気込む。

 日本記録10秒00を持つ日本陸連の伊東浩司強化委員長(47)も「回転がきれいで早い」と評価するピッチがスピードを支える。足を縦に振り下ろすように力強く地面を蹴り、身体は弾むように前へ進んでいく。上体が立つフォームは風の影響を受けやすく、向かい風時は不利になるが、追い風が吹けば、大きな後押しとなる。好条件が整うほど、下克上の可能性は高まっていく。

 まだ日の丸を背負った経験はない。決勝が行われる24日は21歳の誕生日。ロンドンへの切符が自らに贈る最高のバースデープレゼントとなる。【上田悠太】

 ◆多田修平(ただ・しゅうへい)1996年(平8)6月24日、大阪・東大阪市生まれ。石切中から始め、大阪桐蔭高を経て、関学大に入学。高校時代の自己記録は10秒50。15年から関西学生対校選手権の男子100メートル3連覇中。176センチ、66キロ。