バスケットボールのBリーグが今シーズン残り全試合の中止を決定した。2月末から延期、無観客での再開、4月1日までの中止と話し合いを重ねてきたが、開催を断念した。

大河正明チェアマン(61)は「何とか試合をしようと考えたが、状況は日に日に悪くなっている。選手やコーチの健康が一番」と苦渋の決断だったことを明かした。

2つのリーグ(NBL、bjリーグ)を統一し、16-17シーズンからスタートしたBリーグは4シーズン目を迎えた。20-21シーズンでの収益300億円という目標を昨季、2シーズン前倒しで達成。「順調に伸びてきている」と手応えを感じていた。昨シーズンの年間観客数は250万人を超え、こちらも目標の300万人まであと少しに迫っていたが、思わぬ形で“足止め”を食らった。

バスケット界を立て直し、リーグを一から作り上げてきた大河氏はこの困難にも屈せず、前に進み続ける。無観客で行われた3月14、15日の試合後、選手側から提出された声をもとに選手会との話し合いを行った。帰国した外国人選手も含め、開催に疑問を抱く選手もいた。大河氏は「いろいろな意見があった」と受け止めた。それでも「対立するのではない。お互いに協力して、難局を乗り越えていきたい」と今後も手を取り合っていくことを強調した。選手会長の田口(千葉)も「大河チェアマンが気持ちをくんでくださった。選手のことを考えて決断してくれた」と感謝した。

もちろん、課題はたくさんある。3分の1の試合が中止となり、チームの財政的マイナスや、スポンサー企業の存続危機も避けられない。選手の来季契約交渉も難航するだろう。大河氏は、ヒアリングを行い、今後も予断を許さず見守っていくとした上で「3月の資金繰りに関しては、めどが立っている。大きな心配のクラブはないと思う」と前向きな姿勢を見せた。

Bリーグ発足前からさまざまな構想を考え、実現に向けて動いてきた大河氏。現在は日本代表とリーグの窓口を統一したり、下部組織を強化するなど、横のつながりも密にしながらバスケット界の発展を目指している。以前から「自分にはもっといろんな考えがある。どんどんチャレンジしていきたい」と話しており、1万人収容やバスケットボール専用のアリーナ、ドラフト導入など発想は尽きない。掲げた壮大な目標を1つずつクリアしてきた大河氏なら、この逆境も乗り越え、来シーズンのBリーグがいいスタートを切ることができると期待したい。【松熊洋介】

◆松熊洋介(まつくまようすけ) 1977年(昭52)4月30日、福岡県生まれ。日刊スポーツ東京本社に入社後、整理部、販売局を経て、18年12月より東京五輪・パラリンピックスポーツ部に異動。現在バスケットボール、バドミントン、ソフトボールなど担当。