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現役選手の藤森丈晴が行う「満足度」重視の水泳教室

SNSの画像が、ふと目に留まった。競泳日本代表経験がある藤森丈晴(26=ミキハウス)が、第1回水泳教室の受講生を募集していた。画像には藤森丈が契約する水着メーカー「スピードスイムクラブ」の文字はあるが、どうやらSNS以外の告知はないようで「手作り感」が漂っていた。

SNSで水泳教室を告知した競泳男子の藤森丈晴
SNSで水泳教室を告知した競泳男子の藤森丈晴

11月22日、横浜サクラスイミングスクール。藤森丈は14人の子どもを相手に約2時間、みっちりと指導していた。司会進行をこなして、練習メニューも自分で作成。少人数であることもあって、選手たちに手取り足取りで話しかけていた。

水泳教室は引退した選手が行うことがほとんどだ。現役選手が出る場合もイベント会社などがしっかりと舞台を整えて、選手は「ゲスト」として参加する。藤森丈のように告知、受付、指導、講義まですべて現役選手が行うことは異例だ。

藤森丈は「引退して、水泳教室をやる人はごまんといる。でも僕もこれだけ水泳をやってきて、これを生かさない手はない。現役選手がやることで、子供たちにも、親御さんにも、響く言葉の重みが違います」

選手は日本水連に肖像権を預けている。選手が商行為を行う場合、所属先か、日本水連を通して行う。選手は2団体まで所属先を決める権利があり、藤森丈は第1所属としてミキハウス、第2所属としてスピードと契約。今回の水泳教室はスピードのバックアップで実現した形だ。ただ主導はあくまで藤森丈だ。

もちろん水泳教室には受講料も発生する。この日は1人5000円だった。社会人スイマーは一部のトップ選手以外は金銭的に恵まれているとはいえない。

藤森丈は「次の世代の小学生に刺激を与えることは必要だと思う。そしてやっぱり自分の収入という部分もある。ここは隠さずに言いたい。日本はお金の話は汚いというイメージがあり、小さいころからビジネスに触れないまま、いきなり社会人になる。そこは海外とは違うのではないか。引退した後に苦労する人たちも多い。普通に就職して、辞めて、やっぱりスイミングクラブで収入を得る。他にやれることがなくて、水泳に戻ると指導の熱意という部分でどうなのか? スイミングに限らない話だが、とりあえず収入がもらえるから、と作業的にならないか? 社会人選手は現役の時から、頭を使って収入の面やその先を具体的に考えないといけないし、自分がやっているものを生かすことも大切と思う」。

藤森丈はこの日、最後の15分間でスピーチした。子供たちに「疑問を持って、解決法を考えて、自分で行動しよう。これは水泳以外にも通じることです。これをしないと指示待ち人間になる。君たちのころから考えてほしい」と真剣に語りかけた。「せっかく来てくれた人に『一緒の空間にいた』ぐらいの記憶で終わるようにしたくない。最後の講義は、親御さんにも水泳教室の体験を記憶してもらいたいからです」。親も含めて受講生側の「満足度」を重視し、内容を考える。

藤森丈は12月28日、都内で第2回の水泳教室を予定している。告知はやはりSNSになる予定だ。「定期的に月1回はやっていきたい。他の選手の助け舟になれればいいとも思う」。

スポーツ選手は競技に専念すればいい-。かつてはそれが常識だった。ただコロナ禍でアスリートを取りまく環境は変化した。東京五輪後、環境はさらに厳しくなるかもしれない。現役の間から自分の技術を生かし、環境を整えようとする努力は尊い。【益田一弘】

◆益田一弘(ますだ・かずひろ)広島市出身、00年入社の44歳。五輪は14年ソチでフィギュアスケート、16年リオで陸上、18年平昌でカーリングなどを取材。16年11月に五輪担当キャップとなり主に水泳を取材。

スポーツをこよなく愛する日刊スポーツの記者が、スポーツの醍醐味、勝負の厳しさ、時には心が和むようなエピソードなど、さまざまな話題を届けます。

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