経験者の教えにヒントあり-。ラグビーW杯日本大会で初めて8強入りした日本代表フランカーのリーチ・マイケル主将(31=東芝)が14日、決勝トーナメント(T)に向けて“予習”を志した。

スコットランド戦の劇的勝利から一夜明け、横浜市内で記者会見。決勝Tに進んだ02年サッカーW杯日韓大会で、日本代表主将を務めた森岡隆三氏(44)らの教訓を参考に、準々決勝の南アフリカ戦(20日、東京・味の素スタジアム)勝利を目指していく。

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抱き合い、叫び、歌った前夜の興奮は静まっていた。質問を受けるリーチは、答えまでに少しの間を置きながら「なかなか寝付けなかった。チームが怖いぐらいに強くなっている」と確かな自信をにじませた。日本ラグビー界が、長年目指してきた8強。その達成感をかみしめて言い切った。

「もう1回、いい試合を見せたい気持ちが一番強い。そのチャンスを得たことを喜んでいます。ゼロからスタートして、もう1回作り上げることが大事です」

視線は前へと向いた。中6日で迎える準々決勝。8強のうち、日本だけは決勝Tの経験がない。リーチは未知の戦いへ、事前に仕入れていた学びを明かした。

「今、新しい歴史をつくって、ゴールに立った。でも、ここからが大事。ここがゴールではなく、次勝って、その次も勝って…。勝っていくことが大事です」

他競技の先輩に授かった教訓だった。02年サッカーW杯で日本代表主将を務めた森岡氏とは、食事を共にする間柄。決勝T1回戦で敗れ、16強止まりだった当時を、同氏は「より上を目指す志がなかった」と後悔してきた。リーチはその経験談を聞き、切り替えの難しさを実感。この日、恥ずることなく「これから勉強していきたい」と誓った。

ニュージーランド(NZ)で生まれ、過去に数多くの同国代表「オールブラックス」経験者とプレーしてきた。同じ東芝に在籍し、NZ代表として11年W杯優勝経験を持つCTBカフイらの名前を挙げると「どう過ごしてきたか、一言もらいたい。メンタリティーが大事になってくると思う」。独自ルートも活用し、後悔のない1週間を過ごす。

4年前、大金星を挙げた南アフリカとは今年9月に対戦。W杯直前の一戦は7-41の完敗だった。だが、W杯4連勝で過去最高の世界ランク7位に浮上した今、立ち止まる考えはない。

「(W杯の)4つの試合でプレッシャーになれて、注意力も上がってきた。次はもっといい勝負になる。しっかりと勝って、さらに日本の歴史をつくりたい」

また日本全体で喜ぶために、全身全霊の準備を施す。【松本航】

◆森岡隆三(もりおか・りゅうぞう)1975年(昭50)10月7日、横浜市生まれ。神奈川・桐蔭学園高から94年に鹿島入り。95年に清水に移籍し、長く守備の中心として活躍した。07年に京都に移籍し、08年限りで引退。京都コーチ、同U-18監督、鳥取監督などを歴任。今季から清水アカデミーアドバイザーを務め、解説でも活躍。Jリーグ通算307試合10得点、国際Aマッチ38試合。02年W杯では主将を務めた。

◆02年サッカーW杯の日本代表 2大会連続2度目の出場。トルシエ監督、森岡主将の体制で臨み、1次リーグ初戦はベルギーに2-2。第2戦はロシアに1-0、第3戦はチュニジアに2-0と連勝し、H組1位通過で初の決勝T進出。トルコとの決勝T1回戦は0-1で敗れ、ベスト16。