明石家さんま 自身を重ねた「血のつながっていない親子」あふれる作品愛を語る

【番記者裏話】スクープや芸能界の最新情報を求めて現場を駆け回る芸能記者が、取材を通じて感じた思いをつづります。明石家さんまがイベントで語ったプロデュース映画への愛。“お笑い怪獣”とは少し違った姿が見られました。

番記者裏話

松尾幸之介

明石家さんま(66)が4月16日に宮城県石巻市で行ったプロデュースアニメ映画「漁港の肉子ちゃん」(渡辺歩監督)の上映会&トークイベントを取材した。企画立案から完成まで約5年かかったという作品。思いを語るその姿は、お茶の間を笑わせる普段の“お笑い怪獣”の姿とは少し違ったものに見えた。

同作は漁港の船に住む訳あり母娘・肉子ちゃんとキクコが紡ぐ感動のハートフルコメディーで、原作者の直木賞作家、西加奈子氏が石巻を訪れたことで生まれた。主人公の肉子とキクコは血のつながっていない親子。終盤にはキクコの本当の母親について触れられる場面もあり、肉子とキクコの絆が涙を誘う物語となっている。

随所にさんまらしい、お笑いの要素も組み込まれていたが、原作へのリスペクトも強く感じられた。約5年前、さんまは同作を読んですぐに吉本興業に映像化を相談。実写化の可能性も探ったがキャスティング面で難航し、アニメとして世に送り出すことを決めた。

さんまがここまで心動かされた理由に挙げたのは2点。1つ目は、自身も元妻の大竹しのぶが前夫との間にもうけていた息子の二千翔(にちか)さんを育てた経験があり、肉子に自身の姿を重ね合わせ「(キクコが)自分の母じゃないお母さんが大好きというところにすごく感銘を受けた」と語った。

もうひとつは作中の関西弁。「使い方がうまいと言えば西さんに失礼かもしれない」と前置きした上で「非常に少年少女の関西弁をうまく使っていることに感動しました」と話した。

トークイベント後に行った会見でも作品への愛は尽きなかった。「見た回数は今のところ200回は越えていると思います。それぐらい見ましたが、飽きない。(キクコが急病で入院する)病院のシーンは泣いてしまう」。

繰り返したのは「オーソドックス」という言葉。まずは自身のプロデュースとは関係なく「この映画はオーソドックスに見ていただきたい作品」と強調。ほかにも「原作がかなりいいので、そのまま見ていただいて十分なんですけど、感じるのは年代、個人差で違うと思います。人それぞれだと思いますが、人間ってこういうものだ、仲間ってこういうものだと思ってくださったら、オーソドックスにありがたいです」と語った。

さまざまな思いを込めて「漁港の肉子ちゃん」を世に送り出した。まだまだ情熱は尽きていない。次回作についても「もう1本、監督とやらせていただけたらと思って」と語り、小説などを読みあさって再び琴線に触れる作品を探しているところだと明かした。

作中には石巻エリアを思わせる港町の姿も鮮明に描かれている。感傷的になるストーリーと美しい風景はとても印象的だった。渡辺監督は作品に込めた思いを聞かれ「故郷(ふるさと)の手触り」だと答えた。一生懸命に育てた息子の姿と、心に残った少年少女の関西弁。もしかしたら、さんまも、どこか懐かしい“手触り”を感じていたのではないだろうか。壇上に立って語る姿を見て、そう強く思った。