女子100メートル(車いすT54)で初出場の中尾有沙(29=祐和会)が20秒80で2位に入った。「陸上競技用車いすで本格的に練習を始めたのが昨年11月。まだ直線を安定して走らせることができず、ブレを修正するのが精いっぱいでした」と悔しさをにじませた。

 15年に健常者の日本選手権の3段跳びで優勝した。しかし、昨年1月にバーベルを使ったトレーニング中にバランスを崩して脊椎を損傷。車いす生活になったが、入院中に車いす陸上の映像を見て、新たな世界へ意欲をかき立てられた。「日常用から競技用の車いすに乗り移ることさえ時間がかかった」ものの、半年ほどで日本選手権に出場。「トラックに戻ってきたんだと、とても懐かしい気持ち」と語る。

 経験は浅いが長年の陸上競技生活と向上心を生かせるのが強み。「3段跳びで日本一になった時も日の丸をつける機会はありませんでした。車いすの選手として代表を目指したい」。中尾の瞳はすでに世界を見据えている。【宮崎恵理】