女子50キロ級で、マクドナルド山本恵理(34=日本財団パラリンピックサポートセンター)が自己ベストを2キロ上回る53キロをマークして優勝した。初出場だった昨年の55キロ級に続く2階級制覇で、女子の大会MVPにも輝いた。

 試合用に編み上げた髪形に柔らかい笑顔で山本は口を開いた。「今年はスランプの年でした。でも、ここで記録が出せてよかったです。最後も記録を狙ったんですが…」。最終試技では55キロに挑んだが、惜しくも失敗。それでもやっと長いトンネルから抜け出せた。2月のW杯ドバイ大会から7月のジャパンカップ、今月初めの世界選手権メキシコ大会と低迷が続いた。特に世界選手権は3回とも記録なし。非公式には7月に53キロをあげていたが、公式大会では記録が伴わなかった。

 日本代表コーチで、世界的指導者のジョン・エイモス氏(英国)からは「スイッチオン。目の前のバーベルだけに集中するんだ。余計なことを考えるな」とアドバイスを受けてきた。不調になればなるほど、ベンチ台に乗ってからもいろいろなこと考え過ぎていた。その悪循環を集中力で、今年最後の大会で断ち切った。

 昨年5月、パラスポーツ体験ベントに主催者側スタッフと参加したが、自らバーベルを手にすると40キロをクリア。それまで裏方としてパラスポーツを支え、普及に携わってきたが、一転、競技者としてパラリンピックを目指すことになった。競技デビューした昨年の55キロ級から、世界で戦うために50キロ級に階級を下げて20年東京を視野に入れている。

 「東京に出ることでパワーリフティングのことを多くの人に知ってもらいたい。仕事では東京パラのすべて会場が満員になるよう頑張りたいです」。山本がアスリートとして1つの壁を乗り越えた。【小堀泰男】