男子100メートル(義足・機能障がいT64)で11秒47のアジア記録保持者・井谷俊介(25=SMBC日興証券)が2位に敗れた。中央のレーンで並んだライバルの佐藤圭太(トヨタ自動車)と競り合う中、2レーンの大島健吾(名古屋学院大)に先着を許した。タイムは12秒01だった。

「惨敗です。負けたのが悔しい。調子はよかったんですが…」。井谷のコメントにはいつもの勢いがなかった。18年に突然パラ陸上界に現れ、第一人者の佐藤をしのぐスプリントで一気に国内トップに駆け上がった。同年のアジアパラをキャリア1年足らずで制し、200メートルを含めてアジアではほぼ無敵。それが今季初戦で苦杯をなめた。

新型コロナウイルス感染拡大による自粛期間中は東京から故郷の三重県に戻ったが、母親のいる実家には帰らずにホテルに60連泊。感染予防に留意しながら砂浜を走り込むハードな自主トレを敢行した。スタートも昨季までの3点式から両手をつくスタイルに変更。より低い体勢から爆発力のあるダッシュを目指していた。

「進歩していない。メンタルも足りていない。モチベーションも復活していない」。昨年11月のドバイ世界選手権で取り逃がした東京パラリンピック切符の獲得を今春にかけていたが、コロナ禍で大会は相次いで中止、延期。心が大きく揺らいだことも影響したのか。

5日の200メートルは勝ったものの、メイン種目を落とした衝撃は大きい。「練習方法も、コロナの中でやってきたことも考え直さなければいけない」。井谷は出直しを誓った。