72年ミュンヘン五輪以来、49年ぶりの決勝の扉をこじ開けた。陸上男子3000メートル障害の三浦龍司(19=順大)が自身の日本新を6秒塗り替える8分9秒92で予選1組2着で通過。日本勢男子のトラック種目初メダルの期待さえ抱かせる全体2番目の好記録だった。陸上のスタート日に日本勢が存在感を示した。

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世界との壁は、そこになかった。それどころか、三浦が世界を引っ張った。最後1周でエチオピア選手とデッドヒートを繰り広げる快走。ペースアップにも付いていき、むしろ自ら仕掛ける場面も。0秒14差の2着。しかも、最後まで互角だったエチオピア選手は、19年世界選手権銀のギルマ。全体でも2番手。予選とはいえ、その結果はメダル圏内にいると示していた。

レース後はアフリカ勢が倒れ込む中、大きく息が上がった様子もない。お前すごいな-。というまなざしで、一緒に走った選手からは肩をたたかれた。三浦は「おじけづくことなくいけた。タイムもよく決勝にも進めた」。日本選手権で転倒しながらマークした日本新を6秒以上も縮めた五輪の走りは、世界を驚かせた。

順大2年の19歳。体操男子個人総合で金メダルを獲得した橋本大輝は、スポーツ健康科学部でも同期生の身近な存在。「すごいインパクトがあった。刺激になり、励みになった」。橋本のように、五輪の空気感にのまれることなく、力を出せるのは大物の証し。選手村では各国選手が特有の遊びをしている様子を見て、「五輪ってこういう感じなんだなと思いながら、生活している。日本にいながら海外にいる感じ」。楽しみながら、競技も集中できるメンタルの強さがある。

昨年の箱根駅伝予選会では、初挑戦のハーフマラソンで1時間1分41秒でタイムはU20日本最高記録をマークした逸材。約半世紀ぶりに日本人が立つことになる決勝(2日)へ向けては、「ゾーンに入れる。集中できる」。まだまだタイムは上げられそうな口ぶりだった。【上田悠太】

◆三浦龍司(みうら・りゅうじ)2002年(平14)2月11日、島根県浜田市出身。浜田東中-洛南高。洛南3年時は高校総体近畿大会決勝男子3000メートル障害で、30年ぶりの高校記録更新となる8分39秒49。昨春、順大に入学。昨年の全日本大学駅伝では1区で区間新。5000メートル自己ベストは13分26秒78。165センチ。

◆3000メートル障害の競技メモ 「サンショー」と略される。3000メートルを走る間に障害物(高さは男子91・4センチ、女子76・2センチ)を28回、池のような水濠を7回越えていく。各周に5回の障害物があり、その4番目が水濠であることがルール。水濠以外の4つの障害物は移動式。手をかけて越えてもいいが、外側を通ったり、下をくぐったりするのは禁止。

◆男子3000メートル障害 日本勢の決勝進出は72年ミュンヘン五輪で9位だった小山隆治以来、三浦で史上2人目。

 

◆1972年(昭47)の主な出来事 グアム島で元日本陸軍兵士の横井庄一氏が帰還。冬季の札幌五輪、夏季のミュンヘン五輪開催。名古屋場所で高見山が外国人力士初優勝。阪急福本豊が世界新のシーズン106盗塁。あさま山荘事件。上野動物園にジャイアントパンダのランラン、カンカンが来園。日本レコード大賞は喝采(ちあきなおみ)