侍ジャパンが決勝トーナメント初戦で米国に延長タイブレークの末に劇的サヨナラ勝ちした。悲願の金メダルまで残り2勝。4日の準決勝は隣国であり、最大のライバルでもある韓国との激突となった。日韓のプロ野球を熟知し、ライバル決戦を誰よりも注目している人がソフトバンクにいた。

18年からホークスでコーチングアドバイザーを務める金星根(キム・ソングン)氏(78)だ。韓国プロ野球では計7球団で監督を務めた。SK(現SSG)時代には韓国シリーズ連覇するなど通算1372勝を挙げた名将で、韓国では野球の神様を意味する「野神(ヤシン)」と呼ばれた。

「日本と韓国は結局、2試合することになるんじゃないですか」。準決勝を控え、金氏はそう言った。どちらがセミファイナルで先勝しても最終的には、米国の勝ち上がりが予想される5日の準決勝で日韓いずれかが勝ち上がって、決勝の舞台で再び激突するとみている。「(五輪参加の)6カ国の中でベストメンバーをそろえられたのは日本だけですね。韓国は投手の柱がいないです」。

北京五輪では金メダルを獲得した韓国。連覇を狙う今回の代表は「将来を見据えた人選」と金氏は分析する。抑えの呉昇桓(オ・スンファン)や主砲の金賢洙(キム・ヒョンス)の北京経験者もいるがチーム編成は若手主体。五輪開幕前には韓国代表の実力を不安視していたが「戦うごとにいい試合をしている」と大舞台での成長に目を細めた。

2日のイスラエル戦に先発登板した金民宇(キム・ミンウ)はハンファ監督時代の教え子。将来の主戦投手として期待していた。16年のシーズン中、右肘痛に悩まされていた金民宇を治療のため日本に送った。「治るまで帰ってこなくていい」。1カ月近くトレーナーとともに日本に滞在させたほどだった。金氏の持論は日韓両国が切磋琢磨(せっさたくま)して、ともにレベル向上があってこそ、MLBに近づけるというもの。

「(日本と韓国の)どちらが勝つか。あとは気持ちでしょうね」。金氏は左手でポンポンと胸を2度たたいて笑った。【佐竹英治】