89年ぶりの快挙にあと1歩届かなかった。総合馬術個人で戸本一真(38=JRA)が4位入賞。1932年ロサンゼルス五輪の障害飛越で、「バロン西」こと西竹一さん(享年42)が金メダルを獲得して以来の日本馬術界のメダル獲得はならなかった。

硫黄島に散った西さんの伝説を追いかけて、日本の戸本が悲願に挑んだ。2日目のクロスカントリーで5位につけ、最終日のこの日は障害飛越。1本目、障害物を1つ落下させ減点4で7位に順位を下げる。2本目、障害物を1本も落とさずほぼ完璧な飛越も銅メダルまで2・3ポイント届かなかった。結果的に1本目の障害物を落とさなければ、銀メダルだった。

陸軍軍人だった西さんは太平洋戦争が激化した45年3月、無念の戦死。その胸には32年ロサンゼルス五輪金メダル時の愛馬「ウラヌス」との写真があったともいわれている。「メダルを獲得することが夢ではなく目標に変わった。ここで得た経験は絶対にメダルへとつながる」と戸本。メダルには届かなかったが「バロン西伝説」に1歩近づいた。3年後には西さん以来のメダルをつかみ取る。【三須一紀】

◆戸本一真(ともと・かずま)1983年(昭58)6月5日、岐阜県本巣市生まれ。明大卒。8歳で乗馬を始めた。16年に総合馬術で東京五輪を目指すため拠点を英国にし、現在に至る。18年世界選手権で個人23位、団体4位。今回出場した馬はヴィンシーJRA(12=せん馬)。

◆馬術 五輪の馬術は、馬場馬術、障害飛越、総合(馬場+クロスカントリー+障害)の3種目でそれぞれ個人、団体がある。五輪競技で唯一、男女の区別がない。馬場馬術は、演技の正確さや美しさを競う。障害飛越は、障害物を決められた順番通りに飛越、走行し規定時間内のゴールが求められる。総合は、この2つにクロスカントリーを加えた3種目を同一人馬のコンビネーションで3日間かけて行う。3種目の減点合計が少ない人馬が上位となる。