日本人最年少金メダリストは、92年バルセロナ五輪の競泳で優勝した岩崎恭子です。大会直前に14歳になった中学2年生の快挙に日本は興奮。レース後の「今まで生きてきた中で、一番幸せです」は、この年の流行語にもなりました。

 それまでの記録は、32年ロサンゼルス大会競泳の北村久寿雄。日本の夏季大会10代金メダリストは12人いますが、64年バレーボール女子の篠崎洋子と2016年体操男子団体の白井健三(ともに19歳)以外の10人は全員が競泳です。若手の活躍が目立つ競泳ですが、無名に近かった岩崎の優勝には驚かされました。

世界の女子最年少金メダリストは36年ベルリン大会飛び込みのマジョリー・ゲストリング(米国)で、13歳でした。60年ローマ大会競泳のリレーでドナ・デベローナが記録を更新しましたが、出場は予選のみ。決勝を泳がなかったため、IOCは公式の最年少をゲストリングとしています。

競技年齢の高齢化や、出場制限などで近年は10代選手の活躍が珍しくなってきました。もっとも、来年の東京大会では女子金メダリストの最年少記録更新が期待されます。特に若年層が強いスケートボードが新種目になったからです。

昨年9月にサンパウロで行われた世界選手権では、2人の11歳が表彰台に立ちました。ストリートのライサ・レアル(ブラジル)が銀メダル、パークのスカイ・ブラウン(英国)が銅メダル。東京大会は1年延期されましたが、それでもレアルが13歳204日、ブラウンが13歳24日で更新する可能性があります。

日本人の母を持つブラウンは宮崎市育ち。父の母国である英国代表を選択しました。世界選手権優勝の岡本碧優、2位の四十住さくらと表彰台独占を狙う日本勢最大のライバルは「目標は金メダル」と宣言。金は逃しても、36年ベルリン大会競泳200メートル平泳ぎ(前畑秀子の金メダルレース)銅のセーレンセン(デンマーク)と並ぶ個人種目最年少メダルは射程内です。

男子最年少金メダリストは女子より少し年長のクラウス・ゼルダ。西ドイツのボート選手で、コックス(舵手=だしゅ)として出場しました。しかし、もっと若い金メダリストがいることも分かっています。

1900年パリ大会ボートかじ付きペアのオランダチームは本来のコックスが体重オーバーで失格。代わりに会場にいたフランス少年を乗せて、優勝したのです。IOCは後に見つかった写真をもとに7~12歳と推定。名前も年齢も不明ながら「幻の最年少金メダリスト」としています。(荻島弘一)