梅雨が明け、夏の到来だ。多湿は嫌だが、晴れた夏は、気持ちも体も明るくなる。その夏にぴったりなのが、マリンスポーツ。テニスの担当以外に、長年続けてきたのがセーリング担当だ。

四方を海に囲まれた日本にとって、セーリングは、もっと注目され、身近になっていい競技だと思う。しかし、イメージは「お金持ちのスポーツ」、「簡単にできない」。以前、その点を、東京オリンピックの中村健次代表監督にぶつけたことがある。

中村監督は「イメージはそうかな。でも、僕なんか、ただの農家の息子だよ」と笑っていた。そして、セーリングの艇は、個人が集まって共同購入という手があること。始めてみたければ、海がある多くの自治体が、初心者向けに体験スクールをやっていることなどを教えてくれた。

取材で、何度も海に出たことがある。気持ちの良さは、他競技では味わえないものだ。夏ならベースボールキャップに、Tシャツ、短パン、サンダルという、とても取材とは思えない服装が要求されるのも気に入っている。小さい頃から、釣り船やフェリーに何度も乗ったが、酔った経験がない。だから、余計におもしろく感じるのかもしれない。

同時に、トップセーラーたちの厳しさも、素人の筆者でさえ実感できた。五輪でメダル候補の470級は、それほど大きな艇ではない。取材ボート上で、波と風に翻弄(ほんろう)される報道陣とは違い、タフな自然の中で艇をコントロールする能力には驚かされた。

セーリングは、海という自然を相手にするだけではない。用具のスポーツとも言えるほど、多くの器具を操る。操作方法、器具の選び方ひとつで、艇のスピードが違ってくる。自然と先端技術という対極の2面を相手にするのが、セーリングの醍醐味(だいごみ)だと言える。

残念なのは、そのおもしろさや、身近に体験できる情報が、あまり一般の人に伝わっていないことだ。競技は、海上に出なければ見られないため、観客という要素が、最も少ない競技という特性も関わっているのかもしれない。

そもそも観客という設定がほとんどない。すると、一般の人との交流が少なくなり、ひいては敷居の高いスポーツというイメージだけが先行。そのイメージで、競技がなかなか浸透せず、浸透しないと、またイメージだけという悪循環だ。

東京五輪でも、470級を筆頭に、メダルの期待がかかる。競技を通じてだけでなく、そのすごさとおもしろさをトップセーラーとのファンとの交流会、セーラーと一般の人がコンビを組んで海に出る。セーリング講習会などで伝えていってほしい。【吉松忠弘】