東京オリンピック(五輪)のサッカー男子日本代表MF堂安律(23=PSV)が、金メダル候補のスペイン代表から本大会につながるゴールを決めた。

前半42分、MF久保建英(20=レアル・マドリード)のパスに左足ダイレクトで合わせ、4戦連発弾。後半に追いつかれて1-1で引き分けたが、欧州選手権4強のA代表6人を含む強豪と渡り合った。日本は22日に大会初戦で南アフリカと対戦する。

   ◇   ◇   ◇

押され気味の苦しいムードを、堂安が吹き飛ばした。前半42分、左サイドでボールを持った久保がドリブルで加速。中央のスペースへ折り返したところに反応した。左足ダイレクトで振り抜き、シュートがゴール左上を射抜いた。コーナーフラッグで久保にがっちりと肩に手を回され、喜びを分かち合った。「前半は自分のシュートがなかったので、1本打ってみようと。結果になってよかった」と笑みを浮かべた。

得意の形だった。堂安は12日のホンジュラス戦で2得点。2点目はMF相馬のクロスを利き足でない右足で合わせていた。中央の久保、左の相馬らの2列目の特徴を理解し「左から攻略してくる時は(近くには)入らない。怖いところに入っていこうと思っている」。言葉どおり、久保と相馬を信じて待ち、1本のチャンスで仕留めた。「我慢しながらというのは意識していた。そこで1点とれたのは大きかった」と納得の表情を浮かべた。

A代表の常連で、長く五輪世代を引っ張ってきた。17年U-20W杯韓国大会ではイタリア戦で2得点するなど、獅子奮迅のプレーで名を上げた。オーバーエージのDF吉田主将からは「大事なところで力を発揮できる選手になってほしい」と、日本代表を背負う存在になることも期待されている。五輪世代では得意の崩し役だけでなく、フィニッシャーとしての役目も果たす覚悟がある。

今季はPSVからブンデスリーガのビーレフェルトに期限付き移籍。新天地でリーグ全34試合に出場し、最終節ではゴールでチームを残留に導いた。PSVでは出場機会を減らし、苦しんでいた。卓越した選手がいたことで、仕掛けずにパスを選択することも増えていた。「自分らしくない、ネガティブなプレーになっていた」。ビーレフェルトで中心選手としてプレーした時間が、自信を取り戻すことにつながった。「自分のよさをよみがえらせてくれた」。つかんだ手応えを、ピッチで体現してみせた。

チームはこれで大会前の実戦を終了。6月の国際親善試合2試合から、無敗で五輪に乗り込む。この日だけが引き分けとなり「力の差も感じたのが本音。大会中もうまくならないと」と気持ちも引き締まった。目標と公言にしつづけてきた金メダルは、現実味を帯びている。【岡崎悠利】

◆東京五輪サッカー男子の大会方式 1次リーグは16チームが4組に分かれて行い、各組上位2チームが準々決勝に進む。各組の順位は(1)勝ち点(2)得失点差(3)総得点の順で決め、それも並んだ場合は当該チーム間の勝ち点、同得失点差、同総得点、全試合の反則ポイント、抽選の順で決める。準々決勝からは90分で同点の場合、30分(前後半各15分)の延長戦を行い、それでも決着がつかない場合はPK戦を行う。