サッカー男子日本代表は3位決定戦でメキシコに1-3で破れ、68年メキシコ五輪以来53年ぶりのメダル獲得はならなかった。

オーバーエージのMF遠藤航(28=シュツットガルト)がPKを献上するなど、前半で2失点。後半途中出場のMF三笘薫(24=川崎F)が1点を返すも、及ばなかった。五輪史上最強と期待されたが、自国開催の恵まれた環境をメダルにつなげることはできなかった。

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約半世紀、追い続けて手をかけたメダルの夢は、メキシコに打ち砕かれた。前半13分に遠藤がPKを献上して決められると、22分にはセットプレーで相手へのマークを外してしまい、ヘディングで追加点を献上した。絶え間なく選手が動き回ってパスをつなぐ本来の姿はない。「かなり蓄積疲労があるが、タフに戦い抜くことを表現してほしい」とした森保監督の言葉のとおり懸命に走るも、やはり足取りは重い。準々決勝、準決勝と120分間を戦ってきた疲労が伝わった。

それでも反撃したい日本はMF久保が相手の虚を突くパスでMF相馬の得点機を作るなど、攻め込む場面を作った。しかし最後は強引なシュートに持ち込まざるを得ず、守備を完全に崩すにはいたらなかった。

1次リーグでは日本が開始11分までに久保とMF堂安が得点し、1点を返されるも逃げ切っていた。今回は3失点後にMF三笘が今大会初ゴールも、時すでに遅し。同じ形をやり返された。「消耗戦になる。銅メダルへの気持ちが強い方が勝つ」と森保監督は語ったが、現実はチャンスを確実に仕留めた数の差が出た。

金メダルの目標が絶たれたスペイン戦後には、DF吉田主将が発案して選手のみでのミーティングを開催。3位決定戦で敗れた12年ロンドン五輪の映像を見て、疲労がピークの肉体にむちを打ち、心を奮い立たせた。「(ロンドン五輪で4位の)麻也さん宏樹くんに銅メダル渡して帰りたい」。そう語っていた久保の思いも、無残に散った。

銅メダルを獲得した68年大会も、3位決定戦の相手はメキシコ。ホームの相手に2-0で勝利し、自国にメダルをもたらしたかったメキシコをたたいた。53年の時を経た因縁。立場は正反対になった。吉田、冨安というA代表のCBコンビをもってしても守備は崩壊。優勝候補の1つに数えられた相手を逆転する余力は残っていなかった。

賛否両論の中で開催された五輪。大歓声に包まれるはずだったスタジアムは無観客になった。それでもMF田中は「たくさんの人の力があって、戦えている。自分たちのためだけでなく、日本のためにメダルをとることが、選手にできる最大の恩返し」と語って臨んでいた。五輪史上最強と期待されたチームは、笑顔なく大会を終えた。【岡崎悠利】