【松生理乃〈中〉】歩けなくなるまでの練習が導いた境地「ただノーミスしただけ」

日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の思いに迫る「氷現者」をお届けしています。

シリーズ第14弾は、松生理乃(18=中京大)の登場です。昨季は体調不良の影響などもあり、本来の力を発揮しきれない試合が続いた時期もありました。今春からは中京大へ進学し、新たな思いを胸に競技と向き合っています。

全3回の中編では、ジュニア時代にかけての猛練習の日々やジュニアグランプリ(GP)シリーズのラトビア大会で見た景色、22年北京オリンピック(五輪)への期待が高まっていく最中での胸の内に迫ります。(敬称略)

フィギュア

   

19年ラトビアでの経験を推進力に成長。翌20年は初GPシリーズNHK杯で坂本、樋口に続く3位表彰台に立った松生(右)

19年ラトビアでの経験を推進力に成長。翌20年は初GPシリーズNHK杯で坂本、樋口に続く3位表彰台に立った松生(右)

「Congratulation!」19年ラトビアで見た景色

2019年9月6日。青々としたバルト海に面したラトビア・リガで、ジュニアグランプリGPシリーズの第3戦が開催されていた。

14歳の松生理乃にとって、初めての海外での試合。夢見ていた舞台で、表彰台に立っていた。

ショートプログラム(SP)で4位につけると、フリーで7本のジャンプを着氷させた。後半に組み込んだコンビネーションジャンプ3本も確実に降りた。

合計193・03点。順位は1つ上がり、総合順位は3位になっていた。

「自分よりも後の滑走の選手が上にいっていたら、表彰台には乗れなかったので、ずっとダメだろうと思っていて。乗れるって聞いた時は『え、うそでしょ?』って感じでした」

表彰台から会場を見渡す。実感が湧かない。足がふわふわしていた。

1位のイ・ヘイン(韓国)と2位のダリア・ウサチョワ(ロシア)。赤色の衣装を身にまとった2人とハグを交わした時、耳元でささやかれた。

「Congratulation!」

英語での祝福が耳に伝わった時、自分が成し得たことの実感がようやく込み上げた。

「英語で『Congratulation!』って言ってくれて。そこで初めて、本当に海外の試合で表彰台に乗ったんだなって。またここに乗れたらいいなって、すごく思いました」

またここに乗れたらいいな。

その達成感を再び味わうには、猛練習が欠かせないことも悟った。

「こういう舞台で良い結果を残したかったら、たくさん練習しないとダメなんだなって思うようになりました」

18年西日本選手権女子ジュニアフリーで演技する松生。「ノーミスさえできれば、何でも良かった。表彰台に乗れなくても」

18年西日本選手権女子ジュニアフリーで演技する松生。「ノーミスさえできれば、何でも良かった。表彰台に乗れなくても」

太刀打ちできなかった同世代のライバルたち

11歳でダブルアクセル(2回転半)を成功させてからは、一気に点数が伸び始めた。

「アクセルを跳べてから初めてブロック大会に出ると、ノービスで今までは56点くらいしか出たことがなかったのに、いきなり73点も出るようになったんです」

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。