【箱根駅伝story〈16〉駒澤大】鈴木芽吹(上) 成長のために志願した主将

駒澤大(駒大)が10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝を制し、大学3大駅伝で史上初の2季連続3冠に王手をかけました。

チームを引っ張るのが鈴木芽吹主将(4年)。出雲で6区区間賞を獲得すると、全日本では7区区間3位に入りました。

上編では大学2年時の苦い記憶や大八木弘明監督(現総監督)から授けられた言葉に触れながら、今春までの道のりを描きます。

陸上

鈴木芽吹(すずき・めぶき) 2001年6月3日、静岡・熱海市出まれ。長野・佐久長聖高を経て20年春に駒大へ進学。大学3大駅伝に7度出走し、今季は出雲駅伝6区区間1位、全日本7区区間3位。自己ベストは1万メートルが27分30秒69、5000メートルが13分24秒55。「芽吹」の名は「どんな世界でも成長できるように」との願いが由来。

昨年、大八木監督から授けられた言葉

全日本大学駅伝 7区を走る駒大の鈴木

全日本大学駅伝 7区を走る駒大の鈴木

「どうしても田澤さんに挑戦したい」

鈴木が狙いを定めたのは、前回大会で1学年先輩の田澤廉(現トヨタ自動車)が打ち立てた区間記録(49分38秒)への挑戦だった。

全日本大学駅伝7区。例年より気温は5度以上も上昇し、タスキが4区に渡る頃には20度を超える暑さとなっていた。伊勢湾から吹く東風は、向かい風となって吹きつけた。

ランナーにとっては厳しい気象条件。2位に2分21秒差の独走態勢でタスキを受けた鈴木には「無理をせずに首位を守る」という選択もあった。

ただ、そうはしなかった。「いけるんじゃないかな」。最初の1キロを2分41秒で入る。1年前の田澤の入りより約5秒も上回った。

目の前に他大学の背中は見えないが、左手首の腕時計に何度も目をやる。

主将として、駒大のタスキをつなぐ1人として、“見えない敵”に挑んでいく姿を示したかった。

故障を繰り返していた昨年。大八木弘明監督(現総監督)から何度も授けられた言葉がある。

「自分のことだけじゃなくて、誰かのためにと思える選手にならないと一流にはなれないぞ」

2022年の新春のこと。鈴木には苦い記憶がある。

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。