ここにきて、欧州サッカー再開というニュースを耳にすることができそうです。6−8月の本来休暇にあたる時期に対応することで、なんとか来季のスケジュールを確保。そして今季のロスを極力小さいものにしよう、という目的は理解することはできます。しかし本来、彼らが夏に試合をしないのは暑すぎるから。スペインのシエスタも本来の目的は昼寝するだけではなく、暑くて外に出ることができない時間帯は無理に外に出ず、(夜の時間帯も長くなる夏の間は特に)休む時は休むという考え方から来ていることを考えると、上手くいかないのではないかとも感じます。そのような中、今回のテーマは、前回のニューカッスル買収の動きのように、いわゆる投資家からの目線ということでお話しさせていただきます。

昨年、ヨーロッパのフットボール市場を追い続けている研究機関から、興味深いレポートがありましたので一部を紹介します。そのレポートでは、近年ヨーロッパのフットボール業界が並外れて速いペースで進化していることが報じられていました。2017年から2年連続で32に及ぶ有名なヨーロッパのフットボールクラブの全体的な企業価値は9%増加していたが、「EURO STOXX50」(ヨーロッパ全体の主要な優良さを示す一つの指数)は、前年比13%減少とありました。全体として、欧州サッカー連盟(UEFA)によると、ヨーロッパのサッカー市場の営業収益は2010年の130億ユーロから2018年には210億ユーロに増加しており、これは成長率でいくと約65%の成長に相当するということです。

昨今、欧州におけるサッカービジネスそのものは、所有権ポートフォリオを多様化しているといわれており、特に有名なブランドはスポンサーという形を利用してプロモーション・宣伝効果を最大限に活かす動きが活発化しています。特に新しい市場や顧客をグローバル規模で獲得するためのブランド構築に利用する最適なチャネル・ツールと見ており、スポーツを介してヨーロッパ市場への参入を望む中国やアメリカで設立されたブランドにとって、ヨーロッパフットボール市場は巨大で有利・有益になりうるマーケットであるとされています。それがさらにピッチ上での成功と掛け合わさると戦略的・効率的な相乗効果が期待できます。するとクラブ経営自体そのものが有利・有益なビジネスになる可能性を大いに秘めているとされています。

このレポートからすると、明らかに欧州サッカー(特にメインになるリーグ)は、投資先として非常に魅力的なマーケットに映りますが、近年そのプロモーション効果を図る指標として使われるSNSのフォロワー数で比較すると、また一つ異なる見方ができるのかもしれません。次の数字は5大リーグの2020年3月上旬におけるフォロワー数の比較です。(アプリケーションはフェイスブック、インスタグラム、ツイッター、ユーチューブ)

プレミアリーグ   約1億200万人

ラ・リーガ     約9600万人

ブンデスリーガ   約1600万人

セリエ A      約1200万人

リーグ・アン    約900万人

各リーグに差はありますが、この数字だけを見てしまうと、プレミアリーグ、ラ・リーガが2強で、ブンデスリーガとはっきりとした差があることがわかります。

筆者はリーガのクラブでSNS担当部門で仕事をした経験がありますが、新たな投資金額が多額ではなく、比較的低コストでフォロワーを獲得することができます。このフォロワーが非常に大きな収入に化ける可能性があるのも理解できます。

オイルショックと同様、コロナショックという世界規模のクライシスによってSNSのフォロワー数がどの様に変化しているのかは改めて注視しなければなりません。こんな時だからこそ、SNSをより活発に利用していくクラブに、さらに飛躍する可能性が出てきそうです。いったいどのクラブが逆境を跳ね返して成長するのか、注目していきたいと思います。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)