気がつけば欧州フットボールシーズンも終盤を迎えました。各国リーグ戦はラスト10試合前後となり、優勝争い、残留争いなど熾烈な争いが繰り広げられており、どの試合も見応えを感じるところです。そしてカップ戦もベスト4が出そろった状況となりました。欧州チャンピオンズリーグ(CL)では昨年王者のバイエルンが敗退。レバンドフスキの怪我による不在が結果的に大きかった形になり、改めて存在の大きさを感じさせられました。水面下で大物ストライカーの獲得レースに、名乗りを上げている状況でもあると予測できます。一方で初栄冠を狙うマンチェスター・シティはリーグでも首位を独走しており、質の高さとその維持には脱帽です。また昨年悔しい思いをしたパリサンジェルマンは、エースのムバッペに移籍報道が出ています。このメンバーが揃うのは最後かもしれないと思うと、今年のCLへのモチベーションは例年に増して高いはずです。

改めてチームを作り直してきたチェルシーはここ4試合で失点がわずか1という堅守ぶりを発揮し、7年ぶりのベスト4入り。マンCと共にイングランド勢の強さ、レベルの高さを示しました。そして過去10年で最多8回のベスト4入りを果たしたレアル・マドリードです。リーグ戦でも首位争いを繰り広げており、クラシコでは78年以来の3連勝と勢いも十分。ビッグイヤーとリーガの制覇も現実味を帯びてきました。現地の報道によると、コロナによる無観客が主な原因で、ホームで行われた4月10日のクラシコ、14日のCLリバプール戦の2試合で約1500万ユーロ(約19億5000万円)の売上を手にすることができなかったとありました。チケット代が主ではありますが、非常に大きな機会損失であることが浮き彫りになりました。一方で今シーズンのCLで4強入りが決まった時点での賞金総額が1億ユーロ(約130億円)を超えたという報道もあり、リーグ戦などの状況も考慮すると、とてつもない額です。

<1億ユーロの大まかな内訳>

CL本戦出場:1525万ユーロ(約19億8000万円)

1次リーグ成績:971万ユーロ(約12億6000万円)

決勝トーナメント1回戦進出:950万ユーロ(約12億4000万円)

準々決勝進出:1050万ユーロ(約13億7000万円)

準決勝進出:1200万ユーロ(約15億6000万円)

その他:

・マーケットプール(各国のテレビマーケットの価値に基づき各国サッカー協会に放映権料が分配されるシステム:)約2000万ユーロ(約26億円)

・近年の成績に応じたボーナス:3545万ユーロ(約46億1000万円)

もし仮に準決勝でチェルシーを破り決勝進出を果たした場合はさらに1500万ユーロ(約19億5000万円)を獲得することになり、そして優勝するとなる、さらに1900万ユーロ(約24億7000万円)の賞金が手に入るわけで、これもとても大きなものなります。

これらの賞金がこの夏の補強に大きく影響を及ぼすことは言うまでもありません。ここ1、2年間大きな補強を見送ってきたチーム事情や、怪我人の状況からしてもこの夏は補強に動かないということは考えられにくく、さらにペレス会長の2025年までの会長選出も決まりました。おそらく任期満了までの3年間における計画が改めて作成されていると考えられますが、賞金なくして大物獲得はありえなく、特に2022年に完成予定の新スタジアムお披露目も含めて世界中の目が集まることが予測されます。リーガの優勝・CL優勝によってもたらされるものの大きさを考えると、この先10年は安泰であろうと感じさせる次のクリスティアーノ・ロナウドのような存在になりえる絶対的なストライカーに多額の出資を費やしてもおかしくはないと感じます

いずれにしろ、今年のリーガとCLを獲得することができるかどうか。全ては結果しだいです。多くの怪我人を抱えつつ手腕を発揮しているジダン監督あってのレアル・マドリードであることには間違いありません。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)