フットボールチームの経済的な部分にフォーカスした記事を扱っていて、ふと思うことがあります。大きなお金が動いても、本当に黒字のクラブが少ない。赤字のクラブがほとんど。つまり、儲かる可能性はごくわずか、という言葉に変わると思います。どのクラブもその投資を必要としていて、更に、近年の例だとアメリカの投資家や中東の国家組織を背景に持つグループ・企業などになりますが、どのクラブもそういった大きな投資は大歓迎と言う状況にあることには変わりありません。お金はあればあるほどいい、ただしクラブへの口出しは不要、と言ったところです。

そのような状況で、クラブ側も如何に投資を手にするか・巨額を手にするかを考えるわけで、その動きが顕著になってきているのが近年になって出現した、複数のクラブを所有するマルチ・オーナーシップなのだと感じます。きっかけは2014年の12月です。国際サッカー連盟(FIFA)が2015年5月から第三者による選手保有の禁止を発表しました。投資家にとってみれば、投資先がなくなったように感じたわけです。一方で、クラブサイドからしてみれば、どうすれば魅力的な投資を受けることができるのかを見直した結果が、マルチ・オーナーシップという、異国に置かれるクラブを複数保持するという考えに行き着いたのだと考えられます。つまり、より投資を受けるためにはどうしても大きな売り上げになる部分が必要になるわけで、それはなんと言っても選手の移籍金に他なりません。自分たちで見つけて、育てて、売る。しかもこれを異国の複数クラブによって行うことで、よりグローバルに、より魅力的な選手の発掘・育成を行うことで、結果的に売却するときに大きな金額を得られやすくするということになると考えられます。投資を受けるにはどうしても「ビジネスとして可能性を感じる」という部分が必要なわけで、これを無理やり作り出したと言っても過言ではないのかもしれません。

大成功を収めているシティグループ。日本の横浜Fマリノスもそのグループの一員であることは知られていますが、ポイントは出世街道を歩む選手や監督が輩出されているところなのかもしれません。ポステコグルーが良い例です。今は名門トッテナムの監督まで成り上がっています。選手においても日本代表の板倉滉選手は、シティグループが実力を把握・確認したとされています。最終的にシティは、遠く離れた距離の異国の地でプレーしていた板倉選手を見つけ出し、ある程度育ててからボルシアMGへ完全移籍させることで多額の移籍金を獲得しています。

日本からもアジアを中心としたマルチオーナーのクラブネットワークを作り出すことができれば、それこそより良い選手を発掘するだけでなく、大きなビジネスを手にすることができるのかもしれません。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)