「直すところ、ありますか?」。GK海堀あゆみ(28=INAC神戸)は1年前、上杉哲平GKコーチ(29)に質問した。同コーチは新潟などで約10年間プレーして、世代別代表の経験もあった。ただ当時はINAC神戸に入ったばかりで育成スタッフ。トップの担当ではなかった。

 上杉コーチは「ここにくるまで面識はなかった。話しかけられて少し驚いた」。練習時間は異なるのに顔を合わせれば質問攻め。技術、精神面、試合状況を想定したものまで多岐にわたった。ピッチの脇、クラブハウスの通路、駐車場の片隅で話し合った。

 同コーチは今年2月にトップのGKコーチに就任。海堀への本格指導を始めて「一番いい時の状態を忘れかけている。クロスへの対応で少し守りに入ることもある。4年前のプレーを基準に置いて、戻したい」。

 11年ドイツ大会は正GK。シュートへの鋭い反応で、PK戦を制した米国との決勝戦でMVP。5月にカナダで発売されたW杯記念切手にはカナダ選手以外で唯一、起用された。切手に印刷された右腕だけで相手の攻撃を防ぐ姿が理想だ。

 「素直に忠告を聞く。まだまだ伸びる」と同コーチ。海堀はクラブで必ず居残り練習をする。同コーチの「100本蹴って100本同じ軌道になるように」という指示で、低い弾道のキックを1時間近く続ける。練習を終えるのはいつも最後だ。「日々、前進」という28歳は、4年前の再現を狙っている。【益田一弘】