リオデジャネイロ五輪出場が絶望的になったなでしこジャパンのFW大儀見優季(28=フランクフルト)が5日、再建の先頭に立つ覚悟を示した。中国戦から一夜明け、日本は堺市内で調整。大儀見は現体制で唯一、2大会連続で敗退の可能性があった04年アテネ五輪予選を経験した。明日7日のベトナム戦を含めて残り2戦。背番号10のエースが、元世界女王の誇りを示す。

 五輪出場が絶望的となった中国戦から一夜明け、この日の練習会場には「残り2試合でアジア女王の意地を見せろ」というサポーターの横断幕が掲げられていた。練習後には取材を受けていたDF有吉が1分け2敗のショックから泣きだした。GK山根、DF岩清水も涙目になった。だが大儀見は冷静に口を開いた。

 「若かった頃は上の人を見て、試合の意味、責任の重みを感じてきた。それを自分は伝えていきたい」

 04年アテネ五輪予選時に味わった苦しみが武器でもある。00年シドニー五輪で初の予選敗退を喫した日本は、2大会連続不出場は絶対に許されなかった。その中で大儀見は現代表で唯一、最終予選を経験。当時16歳ながらタイ戦にフル出場。先輩の背中を追い、出場権を勝ち取った。アテネの本大会は代表から落選したが、修羅場を体験した強みは自負している。その後の日本は11年W杯優勝で黄金時代を築いた。

 過去を知る大儀見は「W杯の後は勝つことが当たり前になった。はい上がる大変さを分かっていない選手がいる」と語る。7日ベトナム戦前に実施される中国-韓国で、現在2位の中国が勝つか引き分けた時点で日本の敗退が決まる。もはや理屈ではない次元の戦いに入る。

 澤穂希さんの背番号10を引き継ぎ、今大会前には「誰が見ても納得できるプレーをする」と誓った。しかし、現状は3試合1得点。「エースとして見せないと、説得力がない」。かすかな可能性へ、残り2戦を完全燃焼する。【松本航】