サッカーのU-20(20歳以下)W杯韓国大会で、5大会ぶり出場の日本は、第一目標の1次リーグ突破を達成し、16強で大会を終えた。20年東京五輪でのメダル獲得を目指す世代が、“中間発表”と言える今大会で何を得たのか。現地で取材した記者が、見たこと、聞いたこと、思ったことを3回連載でお届けする。第3回はFW岩崎悠人(18=京都)。

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 「360分」。16強で終わったU-20(20歳以下)W杯で4試合全てに先発したFW岩崎悠人(18=京都)が、ピッチを駆け回った時間だ。負傷離脱したFW小川と「2枚看板」としてチーム発足当時から2トップを支えてきた。昨年10月のアジア最終予選は5試合3得点と存在感を見せたが、今大会は無得点。韓国で取材した2週間で、岩崎の最高の笑顔を見ることはできなかった。

 世界大会で重圧に襲われた。「ずっと陰の動きが多くて。なかなかシュートを打てなかったり、直接ゴールに絡むプレーができなかった」と岩崎は振り返る。小川や15歳のFW久保と2トップを組み、黒子の動きに徹した。運動量の多さが特長でもあるが「(2人が相棒で)葛藤はあった」という。悔しかったのは、得点で勝利に導けなかったこと。エースになりきれなかったことだった。

 京都橘高時代に同じような顔を見た。1年から3大会連続で全国選手権に出場。1年でただ1人レギュラーだった時は先輩にエースがおり、自由にプレーしていた。だが、チームの中心になり期待された2年時は1回戦敗退。重圧と厳しいマークに全国の舞台で何もできず、試合後に「もう誰も泣かせたくないのに」とつぶやいた。

 自分に何が足らなかったのか必死に考え迎えた3年時には、吹っ切れた姿があった。1年前と同じ初戦敗退だったが、プレーでチームを引っ張り、FKも直接狙う大胆さがあった。だが今大会は「高校2年の岩崎」に逆戻りしてしまったようだった。

 本人も理解していた。真のエースになるために足りないのは多少のエゴ。ベネズエラ戦後、悔しさを押し殺して言った。「自分で全部仕掛けて、行っちゃうくらいのアグレッシブさを出せるようになりたい」。主役は小川でも、久保でもなくてもいい。自分が主役になっていい。今大会を通じ、18歳が悩みに悩んで出した答えだろう。点取り屋としてエゴを出せれば、東京五輪で「怪物」と称される可能性を岩崎は秘めている。【小杉舞】(おわり)