女子ワールドカップ(W杯)が7日(日本時間8日)にフランスで開幕する。2大会ぶり優勝を狙う日本代表は10日(同11日)に初戦を迎える。サッカー記者歴21年の盧載鎭(ノ・ゼジン)が独自の視点で取材する不定期コラム「ぜじんが行く」は、日本代表に9人を送り出した日テレ・ベレーザの強さの秘密に迫る。昨季なでしこリーグの全タイトルを独占。それが代表にどう生きているのかを調べた。

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なんでベレーザは強いのか? 一番の理由は全国からいい選手が集まるから。中学の女子サッカーチームは全国的に少なく、小学時代に男子に交じってサッカーを始めた女子選手の行き場は限られてしまう。

優秀な子はベレーザの下部組織メニーナ(中高生チーム)のセレクションを受ける。メニーナに入る子が必ず言われる言葉がある。「メニーナで頑張るとベレーザが見える。ベレーザで頑張ると、即代表」。今回は代表に9人も選ばれ、かつて所属した岩渕らを合わせると、11人もの選手を送り出した。

メニーナのセレクションは狭き門で、受かるのは毎年2、3人程度。高校生になると、ベレーザに昇格する選手もいて、公式戦のメンバーを組むのも一苦労だ。わざとそうしている。ここにチームメソッドがある。「ポジションは1つじゃない。みんなと同じ仕事じゃダメ」。セレクションに受かった選手は地元ではスター選手。高いプライドを持った選手の集まりで、自分のポジションへのこだわりが強い。しかしわがままは許されない。複数のポジションをこなさないと、淘汰(とうた)される。自然とポリバレントが身につく。複数ポジションをこなす選手が多いチームほど、W杯のような短期決戦では有利であることは間違いない。

ベレーザの運営会社は東京ヴェルディで、稲城市にある施設では男女合わせて7つの世代が練習している。だから練習試合を組みやすい。メニーナがフィジカル強化を図りたいなら、男子高校生とも練習試合ができる。時間があれば、他のカテゴリーの練習をいつでも見学できる。7つのチームに共通するのは「ポゼッションとテクニック」だ。

15年間、メニーナ、ベレーザの監督を務めた鬼軍曹、寺谷真弓氏(47)がクラブを引き締める。今年から、Jクラブでは初の女性育成責任者となる、アカデミーダイレクターに寺谷氏が昇格した。「サッカーには男も女もない」と、厳しい言葉を浴びせる。準備ができていない選手は、たとえ高校3年の最後の全国大会でも、メンバーから外すほどだ。

精神的にも鍛えられ、練習相手にも恵まれ、身近に代表への道筋がある。この伝統がベレーザの強みで、女子日本代表の原動力となっている。【盧載鎭】

◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。96年入社で2年間の相撲担当以外はサッカー取材。関東のほとんどのクラブ担当を歴任し、日本代表は加茂ジャパンから取材を続けている。最近はフェンシングに興味あり。2児のパパ。