Jリーグも今年で28年目。過去の歴史をさかのぼると、驚きの出来事がありました。偉業、世界的な記録、珍事…数ある中から、えりすぐりの“すべらない話”をご紹介します。

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交代枠を使い切った後にGKが退場になり、フィールドの選手が急きょゴールマウスを守る。サッカーではたまに見られる光景だが、Jリーグにはなんと、89分間もGKを務めたDFがいた。

03年7月26日、当時J2の横浜FCはホームで大宮アルディージャと対戦した。アクシデントが起こったのは開始1分。GK菅野が、相手シュートをペナルティーエリア外で手を使い止めたとして、退場になった。「開始1分でGK退場」だけでも十分に珍しいが、当時の横浜FCでは控えGKが全員負傷しており、ベンチにはフィールドプレーヤーしかいなかった。

リトバルスキー監督は、DF河野淳吾(当時21)にGKを務めるよう指示した。この試合を観戦していた河野の父によると、GKを務めたのは「小中学生時代を含めても初めて」だったという。河野は相手シュートを弾くなど健闘したが、3失点してチームは敗戦。ちなみに、対戦した大宮のGKは川島永嗣だった。

河野は08年にサッカー選手を引退後競輪選手に転身し、現在も活躍している。

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「退場者が出たのに11人対11人で試合が続けられた」という出来事もあった。

05年10月1日、柏レイソルとヴィッセル神戸の一戦は、柏の1点リードで後半41分を迎えた。逃げ切りたい早野監督は3枚目の交代枠として、MF小林亮に代えてMF大野の投入を指示。ところが小林亮はゆっくりとベンチへ戻ろうとしたため、主審からイエローカードを提示された。

この試合で小林亮は既に警告を受けており、本来ならばここで退場となるはずだった。しかし主審がこの事態に気がついたのは、大野がピッチに入った後だった。小林亮にはレッドカードを提示して退場処分としたが、「警告を出す前に交代が成立していた」と判断した主審は、大野をベンチに戻さず試合を続行。最後まで11人対11人で行われ、そのまま1-0と柏が逃げ切った。

これはルール適用のミスだが、神戸が求めた再試合は「審判の判定は覆らない、再試合はしない、という大原則」のもと却下された。近年もよく“誤審”が取り沙汰されるが、審判も人間。リーグの歴史が深まれば深まるほど、誤審だって出てきてしまう。サッカーがない日常が続くと、誤審で騒いでいたあの日々さえいとしく感じる。一刻も早く、Jリーグのある日常が戻ってくることを祈るばかりだ。