全国高校サッカー選手権が100回を数える間に、高校生年代の育成&強化の環境も大きく変化した。代表的な例が、プロクラブが運営する育成組織ユースの誕生。80年代までは高体連(高校の部活)が育成&強化のすべてだったが、92年のJリーグ発足に伴い、各クラブに育成下部組織のユースを持つことが義務づけられた。

プロクラブが育成を行うのは主に欧州の文化を取り入れたものだ。練習場などハード面が充実。セレクションがあることで、競争力も高く保たれる。トップチームを間近にして刺激を得られるなど、メリットは数多い。特に厳しいセレクションを通過したことで、育成年代ではクラブユース組が“エリート”で高体連組は“雑草”のようなイメージがつく。

アンダー世代のU-16、17、19、20日本代表に選ばれる選手の中のユース所属、出身者の割合は年々増加している。06年にJクラブのユース出身者が初めて高体連を上回った。今夏の東京五輪に出場したU-24日本代表は、18人のうち14人がユース出身者だった。

“雑草”は“エリート”にかなわないのかといえば、それは違う。21年の日本代表に招集された選手を見ると、ユース出身が19人で合計83試合に出場、高体連出身が20人で105試合と“雑草”の数が上回った。来年1月の親善試合ウズベキスタン戦の日本代表22人のうち、ユース組と高体連組は同数。W杯日韓大会のあった02年の日本代表では高体連組が164試合に出場した一方でユース組はわずか41試合と4倍もの差があった。年々差は縮まってきたとはいえ、まだ高体連出身者が日本代表の半数を占めている。

今年はJリーグでも高体連組の活躍が目立った。ベストヤングプレーヤー賞を獲得した鹿島MF荒木遼太郎(19)は東福岡高出身。またJ1の得点ランキング上位12人を見ると、外国出身選手5人を除く7人全員が高体連出身の選手だった。今も“部活組”の存在は重要なままだ。

確かに練習環境の面ではユース組が恵まれている。一方でJユースと高体連の強豪が集まるプレミアリーグでは青森山田高が、今年2度目の優勝。高体連組には100回の伝統を誇る全国大会への挑戦や、プレー面だけでなく、学校生活を含めた「部活動」の価値は不変だ。ユース組織が充実する欧州には、学校教育の中にサッカーがあるという文化はない。ユースと高校。優劣をつけることはできないが、両輪で才能発掘の可能性を探れるのが日本独自の良さで、それが高校サッカーの変わらぬ盛り上がりにつながっている。【岡崎悠利】