サンフレッチェ広島が延長戦を制し、天皇杯、ルヴァン杯の今季2冠獲得へダブル王手をかけた。

120分の死闘は途中でラフプレーが増え、荒れ気味の展開に。激しい球際の攻防や気迫のぶつかり合いは、見る側の興奮を誘う側面もあったが、京都サンガに5枚、広島に1枚の警告が出た。その中で際立ったのが、京都の“圧”を真正面から受けて立った広島の守備陣だ。

3バックの中央でウタカ、イスマイラの京都FWに立ち向かったDF荒木隼人(26)は「ホッとしたのが正直なところ。準決勝は(決勝進出への重圧で)硬くなりやすいし、実際に緊張もあった」。それでも激しいバトルに1歩も引かなかった。今季日本代表に復帰した男の存在感があった。

同じく3バックの左を守ったDF佐々木翔(33)は「前線(の選手)からアグレッシブに、あれだけ躍動感を持ってやってくれたら、僕らも楽しい」と、仲間の気持ちに応えた。効果的な縦パスを何本も通し、ミスが出てもそれ以上の結果をもたらせた。

今回で天皇杯出場最多70度目という広島だが、前身東洋工業時代の69年度を最後に優勝がない。Jリーグ発足後は5度も決勝に進み、全試合で完封負けという複雑な思いをしてきた。

6度目の正直へ、荒木は「また優勝カップを取れない、という悪いジンクスはいずれ終わる。新しい歴史をつくりたい」。53大会ぶり4度目の日本一は、クラブの新たな黄金時代を告げる瞬間になる。

14年まで3年間在籍した古巣、J2ヴァンフォーレ甲府との決勝について、佐々木は「このチーム(広島)に星(タイトル)を付けるために移籍してきた。選手として、決勝で古巣と戦うことができる。これ以上のものはない」と、運命的な決勝を喜ぶ。

ちなみに、ルヴァン杯も広島は過去2度の決勝で2連敗中。カップ戦の決勝は計7戦全敗という負の歴史を持つが、今季はどちらもピリオドを打てる機会をつかんだ。

16日の日産スタジアムでの天皇杯決勝は甲府と、22日の国立競技場でのルヴァン杯決勝はセレッソ大阪と対戦する。広島が、わずか1週間で2冠獲得という夢に突き進む。【横田和幸】