2シーズン目を迎える女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が、22日に開幕する。11年女子ワールドカップ(W杯)で世界一になった三菱重工浦和レッズレディースFW安藤梢(40)は、筑波大で助教を務めており、今季も先生との“二刀流”だ。

「サッカーではベテラン。大学では新人教員です」。平日の午前中はユニホームを着て、さいたま市内でトレーニング。午後はスーツに着替え、都内のキャンパスで授業や研究発表を行う。遅い時は午後9時まで。試合前日でも関係ない。帰宅後や休みの日にも研究の続きを行うことがある。

昨年から助教となり「WEリーグ」も日本初のプロリーグとして発足した。2つの顔を両立する多忙な毎日だったが、相乗効果を感じた。「研究がサッカーに生かせるし、サッカーでの課題が研究にもなる。大変でしたけど、すごく充実していました」。

昨年は女子サッカー選手のセカンドキャリアについて研究。今年に入り、欧州の女子サッカーとの比較を始めた。「ヨーロッパのサッカーは進化していて、縦にすごく速い。日本もそこはプラスで強化していかないといけないし、WEリーグを盛り上げる意味でも、見ている人が面白いと思うプレーも増やしていきたい」。

実際にポジションが近い選手と欧州の映像を見ながら「こんなシーンを(実際に)やりたい」と提案。大学ではそのプレーができる要因を研究しているため、より詳しく説明することもできる。

プロリーグになり、サッカーに集中できる環境になった。選手やチームのレベルアップを実感する一方で、女子サッカー人気への課題も感じている。「若い選手たちの成長、チーム力も上がってきているとすごく思いました。ただ、もっと爆発的に、女子サッカーをみんなに知ってもらいたいという思いがあります」。プレーで魅了することはもちろん、ピッチ外でファンを増やす方法も自ら模索している。

大学の授業ではグループワークとして、学生たちにそのためのアイデアを出してもらった。漫画のキャラクターとのコラボレーション、海外でプレーしていた選手の人脈を生かした各国リーグとの交換留学…。「面白いです。逆に学生からいろいろ学ばせてもらっています」。サッカーを中心にさまざまな刺激を受ける毎日だ。

7月に節目の40歳を迎えた。ゴールを決めれば同級生たちからも連絡が届き、スタジアムでは同世代のファンから声をかけられる。「自分も頑張ろうと思った」「頑張っている姿で元気をもらっています」。その言葉が安藤のパワーになる。

「選手もどこまで続けるか決めていないですけど、毎年、1年1年が勝負だと思ってプレーしている。WEリーグでチャンピオンになって、個人的にはゴールを決めて、アラフォーに元気を与えていきたい」。ピッチの中も外も、まだまだパワフルに駆け回る。【磯綾乃】

◆安藤梢(あんどう・こずえ)1982年(昭57)7月9日生まれ、栃木県出身。3歳でサッカーを始め、02年にさいたまレイナスFC(現三菱重工浦和)に入団し、10年からブンデスリーガへ。フランクフルトなど3チームで8シーズンをプレーし、欧州チャンピオンズリーグ制覇も経験。17年に三菱重工浦和に復帰。11年にW杯優勝、12年ロンドン五輪で銀メダル。WEリーグ初年度の昨季はベストイレブンに輝く。

◆WEリーグ 11チームによるホームアンドアウェー方式で全22節、合計110試合が行われる。各節で試合のないチームは「WE ACTION DAY」として、リーグやクラブの理念に基づいた活動を実施。来季からはC大阪堺レディースが参入予定。優勝賞金は2000万円、2位は1000万円、3位は500万円。初年度はINAC神戸が優勝。今季開幕に先駆けて行われた「WEリーグカップ」では、三菱重工浦和が頂点に立った。