日本サッカー協会の審判委員会のトップ松崎康弘審判委員長が9日、都内のJFAハウスで会見し、J1第1節(6日)の広島-清水戦(広島ビ)でのPKについて、岡部拓人主審(28)の判断が間違っていたことを認めた。審判委員長が個別のジャッジに具体的に言及することはもとより、正否を明言する極めて異例の事態となった。

 問題のプレーは前半3分、広島がPKを得たところで起きた。ボールをセットしたDF槙野がペナルティーエリア外に出た直後、左サイドのペナルティーエリア外にいたFW佐藤が突然走り込みシュート。広島側のトリックプレーとして話題を呼んだ。

 しかし、実は反則だった。松崎委員長は、主審岡部がキッカーを特定した瞬間として、笛を吹いた時の状況を、映像を示しながら解説した。その時ペナルティーエリア内にいたのは槙野だけ。「槙野がキッカーとして特定されたと見るのが妥当」と説明した。その上で「佐藤選手が外から走り込んだ時点で、その場所での(清水の)間接フリーキックとし、佐藤には反スポーツ行為として警告を与えるべき」と結論づけた。

 審判委員長が判定の誤りを認めたが、試合は成立し、1-1の結果は変わらない。間違った判定で得点が認められた点について「主審も副審も競技規則を知りながら、きちんと判断できなかった。すぐに主審、副審から話は聞いた。何らかの対応を考えます」と言った。岡部主審には、2試合の割り当て停止と研修が義務づけられた。

 多くのファンもトリックプレーに驚いたが、皮肉なことに、間違いを審判界トップが認めたことにより、ルールの周知が促進される結末となった。