20日開幕のワールドカップ(W杯)カタール大会を、日本ではインターネットテレビABEMAが全64試合を無料生中継する。「新しい未来のテレビ」を掲げるABEMAのビッグチャレンジとなる。
現場のキーマン、ABEMAの編成本部スポーツエンタメ局局長で中継責任者の塚本泰隆氏、共にABEMAを運営するテレビ朝日から、このプロジェクトのために参加した、長畑洋太プロデューサーの2人にその思いと覚悟を聞いた。
(聞き手・八反誠)
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-ABEMAの塚本さんとテレ朝の長畑さん、おふたりの立ち位置を教えてください
塚本 ABEMAには、ゼロからサッカー中継を作ってきた経験が、ほとんどありませんでした。今回W杯を全試合生中継するにあたり、具体的にFIFA(国際サッカー連盟)とどうコミュニケーションを取るのか? など、あまり想像ができなかった部分が当初はありました。テレ朝さんとはABEMAを共同事業として運営していることもあり、何より、テレ朝さんのサッカー中継には「絶対に負けられない戦いが、そこにはある」といった伝統と経験もある。ぜひプロデューサーとして、ということで長畑さんに来ていただきました。
-テレビと、インターネットテレビ局であるABEMAに、番組作りなど、違いはありますか
塚本 ABEMAとして、世の中、皆さんに満足していただけるものを、我々の今の力で届けられるんだろうか? 今回はまず、その思いからはじまりました。地上波がすごいなと思う部分は、「自分たちのサッカー中継はこれだ!」という、はっきりとしたものがある。我々はライト層も、コアなファンの方々も大切にしたい中で、サッカー中継を長くやってきたわけではなく、確立されていない部分があり、そのバランスが今回のポイントになると感じています。
長畑 とにかく、ABEMAさんはスピードが速い。アイデアを出し、とりあえずでも、まず当たってみる。当たってみて、脈がなかった場合の、いい意味での“損切り”が速いな、とまず感じました。割とテレビ局は、基本、こういう中継だ、というカチッとしたものがすでにあります。例えば、番組から何か1つコーナーを足そう、引こうは、それが1分程度のものだとしても、珠玉のものであるという思いが強いんですが、ABEMAさんは、とにかく決断、チャレンジのスピードが速い。そこに驚きがありました。
塚本 企業文化もあると思います。我々は後発の映像事業者として、「新しい未来のテレビ」と掲げています。MLBや将棋でも、どう届けていくか? と試行錯誤しながら、いろんなことを行っています。こうだ、こうである、というものがスタート間もないだけに、まだない。ないだけに、チャレンジャーとしてやれる部分があるのかな、とも思います。
-今回のABEMAのW杯中継におけるこだわりを教えてください
長畑 まさにサッカー、サッカーをいかにしっかり見せるか、です。サッカーファンにそっぽを向かれたら意味がない。スポーツ、サッカーを見せる上での大事な部分には、絶対に、こだわってやっていきたいと思います。それはまず、分かりやすさ。アナウンサー、解説者の方の起用についてよく考えることから、データの見せ方まで。根本にあるサッカーの見せ方においては、絶対に譲れない一線がある。そう思います。ただ、僕らも、テレビ朝日の中継をそのままこっちに持ってきてやっても、ABEMAさんとして新しいものをやる意味はなくなる。ベースをおさえつつ、ABEMAの色をつけていってもらう。ここにすごくこだわっていますし、苦労しています。
塚本 いろんな人にサッカーを届けるチャンスをいただいたと思っています。ABEMAだからこその、いろんな状況で見ていただけるという部分を想定して、まずはそういったインフラになりたい。いろんな人に、いろんな使い方をしてほしいと、サービスとしては門戸を開いているんですが、こと中継内容となると、誰にどうフォーカスするのかが難しいポイントだと思っています。コアな人向けになることもあれば、ライトな人たち向けになることもあると思うんです。だけど、トータル64試合でABEMAとしてやって良かったと思えることが、僕の中ではゴールだと思っています。W杯でいろんな人たちが熱狂できるプラットフォームでありたいな、と思っています。
-最後に、おふたりの、今回の中継にかける思いを教えてください
塚本 サッカーという、世界でこんなにも愛されているスポーツを体験していただくチャンスをもらえたからには、まず、楽しさを伝えられたらいいと思っています。いろんな見方をしてもらいたい。好きなチームや、推し選手を見つけたり。まずは、そんな機会にしてもらえたらいいなと思っています。
長畑 世界中でサッカーはサッカー、だと思います。1つのルールで、1つの共通言語であり続けています。ボールを蹴っているだけで世界中の人とつながることができる唯一無二のもの。今回は世界中で50億人が見るといわれています。それがサッカーでありW杯。世界の50億人のうち、日本の、1億何千万人分を今回受け持つんだ、そうとらえているので、今から武者震いがします。
◆ABEMA サイバーエージェント傘下の株式会社AbemaTVによる、動画配信事業。16年4月に本開局。24時間編成のニュース専門チャンネルや、オリジナルのドラマ、恋愛、アニメ、スポーツ、将棋など、多彩な番組を提供。過去に「THE MATCH 2022」など、話題となる番組を放送。


