【アルワクラ(カタール)5日=岡崎悠利】FIFAワールドカップ(W杯)に出場した日本(FIFAランク24位)は、決勝トーナメント1回戦でクロアチア(同12位)にPK戦の末に敗れた。史上初の8強は、4度目の挑戦を持ってしても到達できなかった。何が足りなかったのか? 森保ジャパンの今大会を振り返り、総括する。

    ◇   ◇   ◇

18年7月。「ロストフの悲劇」を目の当たりにした。空中戦で押し込まれ、高速カウンターを浴び、2点差を逆転された。「ロシアの悔しさを、4年後に晴らす」。18年9月、森保一監督(54)が、就任後初の活動で選手に語った。

4年がたった。ドイツに勝ち、スペインに勝った。まさに夢のような時間。クロアチアによって現実に引き戻された。「時間がたつほど、自分たちに分があると思う」と語ったDF吉田麻也主将(シャルケ)の思惑は外れた。延長戦に入り、明らかに足が重くなったのは日本だった。中央で相手のプレスをかいくぐり、サイドに出ていたパスはクリアに変わった。

前半は守り、後半で仕掛ける。さらにこの日は先制点も奪った。この上ないゲーム運びをもってしても、クロアチアは崩れなかった。逆に日本はスペイン戦の反省が生きず、安易にクロスを許してたたき込まれる同じような失点で追いつかれた。「PKは練習していた。GKリバコビッチはセーブしていたので自信があった」とダリッチ監督。試合巧者の土俵に引きずり込まれた。

クロアチアDFグバルディオルは素晴らしい選手だった。消耗したはずの後半も、球際、スピード、高さ、足元の技術どれも落ちなかった。後半途中出場のFW浅野拓磨(ボーフム)は、何度もGK権田修一(清水)からカウンターを託すロングボールを受けたが、ついに1度も振り切ることができなかった。

大きく前がかりにきたドイツやスペインには、相手の力も利用したカウンターがより効果的だった。ただ、敗れたコスタリカ戦しかり、決勝トーナメントに入ったクロアチアはより堅かった。頼みのMF三笘薫(ブライトン)がドリブルで1人をはがしたとしても、スペイン戦では空いていたスペースにカバーに入ったDFがいた。森保監督は「相手がよく分析し、いいところを消してきた」と認めた。

主体的に崩して決めきる。日本代表が抱える根本的な課題は、依然として残った。20歳にして圧倒的な存在感を放つグバルディオルのようなDFに対し、浅野にかけるしかなかった。それが日本代表の現在地なのだ。浅野は悔しさのあまり、「くそみたいなプレーだった。何もできず、ふがいない」と吐き捨てるように言った。

8強に残ったフランス、イングランド、アルゼンチン、ブラジル…。どこの国にも、世界に名をはせるストライカーがいる。そんな猛者との1対1をこなすDFが、決勝トーナメントの相手なのだ。「ボールを強く、狙ったところに決めていくという部分においては、日本と世界トップのチームとの差はある」と森保監督も認めている。機敏な日本のFWたちは厄介だが、まだ怖い存在ではない。そう言わざる得ない。

日本は「いい守備からいい攻撃」のコンセプトを掲げた。センターバックには東京五輪世代から見てきた冨安健洋(アーセナル)、板倉滉(ボルシアMG)ら、高さとパワーで世界と勝負できる存在が出てきた。相手とのパワーバランスも考え、指揮官がまず「いい守備」を軸にしたのは自然だった。前回大会の反省も生かし、1次リーグではリスクを冒してでも大幅なスタメン変更を敢行。疲労の軽減にも成功した。

8強に進むために必要なマネジメントはできていた。うまくいっていたからこそ、これが最大の結果だったとも言える。世界の上位8チームは、どこかに明らかな戦力不足を抱えるチームが立てる場所ではない。そう痛感させられた。