高度1万メートルから日本代表にエールが送られていた。

FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会の決勝トーナメント1回戦(日本時間6日午前0時開始)で、日本はクロアチアに1-1(PK1-3)で敗れた。

史上初の8強入りを目指した日本代表を応援していたのは、地上のファンにとどまらなかった。今大会のオフィシャルエアラインとなっているカタール航空では、機内サービスでW杯を無料視聴できる。偶然乗り合わせた日刊スポーツの記者が、その様子を振り返った。

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背もたれ、枕、ヘッドホン…。さまざまな場所にW杯のロゴが入った機内で、離陸前にありがたいアナウンスが流れた。

W杯のライブ中継はWi-Fiをつなぐことで、ご覧いただけます-。

成田空港を5日午後10時前に出発し、ドーハへと向かう航空機。約2時間後、ちょうど鹿児島の南の海上を飛行している頃、日本代表戦のキックオフとなった。

座席から目に入るだけでも、5人以上がスマホやパソコンを見つめていた。電子機器の「Wi-Fi」をONにすると「Watch Now」のボタンが登場する。それを押すと鮮明な映像で試合を視聴できた。モニターの「フライトマップ」を確認すると、高度は約3万4000フィート、約1万メートルあたりで数字が推移していた。運ばれてきた機内食を食べながら、序盤の攻防を見守った。

乗客のガッツポーズが見えたのは、前半43分、FW前田の先制ゴール時だった。最初に「うぉ~い!」と小さなボリュームで喜ぶ声が聞こえたが、自分の画面はその直前のプレー。それぞれの電子機器で時間差があり、数秒後にあちこちから「えっ、えっ、えっ、入った!」などと、歓喜の声が聞こえた。機内のため派手に喜ぶことはできないが、おのおのが心の中で代表にエールを送っていた。

同点に追い付かれ、迎えたPK戦。2人目のMF三笘が外したところで、こちらはまさかの配信一時停止となった。再開された時にはクロアチアの面々がハイタッチをしており、日本の選手たちは悔しさをかみしめながら、客席に一礼していた。

前後半と延長戦の120分にPK戦の激闘。飛行位置を確認すると香港の南西にまで来ていた。「うわ、まじかぁ…」「でも、よく頑張ったよね」。そんなひそひそ話が聞こえてきた。

私の行き先はフィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルが行われるイタリア・トリノ。ドーハでは約2時間の乗り継ぎだけだが、W杯への関心の高さを再確認し、息詰まる戦いの雰囲気を味わえた空の旅だった。【松本航】

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