FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会決勝トーナメント1回戦で、日本はクロアチアに敗れ、大会を終えた。1次リーグでは優勝経験のあるドイツ、スペインを撃破したが、目標の8強入りは逃した。森保一監督(54)が就任して4年。今大会を通じて得た収穫と課題とは何か。「森保ジャパン ドーハの光と影」と題し、連載する。

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4年前のW杯ロシア大会で、日本は「ロストフの悲劇」で敗退した。今回と同じ決勝トーナメント1回戦でのショッキングな出来事。2点リードしながら、当時は空中戦で押し込まれ、延長戦目前で高速カウンターを浴びての逆転負けだった。「この光景をベンチからコーチとして見届けたのが森保監督。18年9月、監督になって初めてのA代表の活動でロシアの悔しさを、4年後に晴らす」と、選手に伝えた。

今大会はドイツに勝ち、スペインに勝った。しかし、ベスト8を懸けたクロアチア戦で現実に引き戻された。「(試合は)時間がたつほど、自分たちに分があると思う」と語って試合に臨んだDF吉田麻也主将(シャルケ)の思惑は外れた。延長戦に入り、明らかに足が重くなったのは日本だった。

前半は守って、後半に仕掛けるプランだったが先制できた。想像の上をいく展開だったが、クロアチアを崩してとどめを刺すことは、120分間できなかった。スペイン戦の失点場面と同じように、安易にクロスを許して追いつかれた。時間がたつにつれ、前回大会準優勝の実績を持つ試合巧者の土俵に引きずり込まれた。

ドイツやスペイン相手には、相手の力も利用したカウンターがより効果的だった。ただ、敗れたコスタリカ戦とクロアチア戦、相手の守備は堅かった。頼みのMF三笘がドリブルで相手のマークを1人、外しても、スペイン戦では空いていたはずのスペースに、カバーするDFがいた。森保監督は「相手がよく分析し、いいところを消してきた」と言う。

ボールを保持し、主体的に崩して決めきる-。日本が抱え続ける根本的な課題は、残ったまま。ドイツ戦の1得点だけだったFW浅野は敗退後「くそみたいなプレーだった。何もできず、ふがいない」と吐き捨てるように言った。

8強に勝ち上がった中でも、フランス、イングランド、アルゼンチン、ブラジル…。強豪国には、世界的なストライカーがいる。PKも踏まえ、「ボールを強く、狙ったところに決めていくという部分においては、日本と世界トップのチームとの差はある」と森保監督は言う。機敏な日本のFWたちは厄介で、守備では走り続けられるが、肝心の決定力は足らず、まだ怖い存在ではない。

森保ジャパンは「いい守備からいい攻撃」のコンセプトを掲げた。センターバックは東京オリンピック世代から冨安、板倉ら高さとパワーで勝負できる存在が出てきた。指揮官がまず「いい守備」を軸にしたのは自然だった。1次リーグではリスクを冒してでも大幅な先発の変更を敢行。疲労の軽減にも成功した。

8強に進むために必要なマネジメントはできていた。うまくいっていたが、これが最大の結果だったともいえる。長年言われ続けていることだが、4年後に向けてストライカーの育成は必須になる。【岡崎悠利】