サッカーのFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会の決勝、アルゼンチン対フランスが19日午前0時(日本時間)にキックオフとなる。

注目が集まるアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(35=パリ・サンジェルマン)はW杯出場5回目にして、悲願の初優勝を目指す。メッシは母国の英雄で「神の子」と称された故ディエゴ・マラドーナ氏と「史上最高の選手」の位置づけで、最たる比較対象者。優勝を飾って、実績でも「神の子」に迫りたい。マラドーナに魅せられて南米に渡り、マラドーナとともにプレーしていたこともある城西大女子サッカー部監督の亘崇詞さん(50)に話を聞いた。

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メッシは年間の最優秀選手賞「バロンドール」を7回受賞するなど、輝かしい実績を残してきたが、W杯のタイトルはいまだなく、2014年の準優勝が最高成績。アルゼンチンは、マラドーナを擁して優勝した86年以来36年ぶりのトロフィーを目指す。亘さんは「アルゼンチンは、僕がサッカーを始めて、南米に行くきっかけになった。優勝できるかもしれないという位置にいるのはうれしい」と目を細める。

亘さんは、91年にアルゼンチンに渡り、ボカ・ジュニアーズで選手、スタッフとして活動した。06年には引退後のマラドーナと一緒にプレーしたこともあり、「とても気さくで誰にでも平等に接する人」と、当時を振り返る。アルゼンチンではマラドーナの存在は神格化されており、メッシとマラドーナがよく比較されることについて、亘さんは「サッカーの“数字”的にはメッシは超えています。ただW杯を優勝しても『マラドーナを超えた』と、アルゼンチンの人は言わないんじゃないかな」と語った。

若くしてヨーロッパに渡り活躍したメッシだが「代表でプレーするにはハートが足りない」と、国民から批判の声が上がったことがある。自身最後の大会とする今大会では、準々決勝のオランダ戦で荒ぶる感情を爆発させる熱い一面を見せた。亘さんは「メッシがチームメートに声をかける動画を見たんですが、良いことを言っているんですよね。おとなしかったメッシが、あんなふうに人をけん引するようになったんだって。アルゼンチン国民もそう思っていると思います」と話し「僕もマラドーナさんの話を聞いて結構しびれた」と自身の経験と重ねた。

亘さんはマラドーナとメッシの共通点を「苦しい中でもボール1つで人生を変えたこと」と挙げた。マラドーナは貧しい家庭の生まれで、メッシは幼少期に病気を患っていたが、ともに世界最高峰の選手にまで上りつめた。亘さんは「メッシはマラドーナを『超えられるか』と期待されていましたが、今は時代が違うし2人は別物。アルゼンチンが優勝すれば最高ですし、たとえ逃したとしても、メッシは永遠に語り継がれる選手になると思いますね」と語る。自身のW杯・最終章で優勝へ導いたとき、母国のみならず、ワールドワイドの歓喜に包まれるのだろう。【沢田直人】

◆亘崇詞(わたり・たかし)1972年3月8日生まれ。岡山県出身。高校時代にアルゼンチンに単身で留学し、92年から約2年ボカ・ジュニアーズに所属した。03~05年は栃木SCでプレー。10年に東京ヴェルディのジュニア、12年に日テレ・ベレーザのコーチを務め、17年に湯郷Belleの監督、22年から城西大女子サッカー部の監督に就任した。サッカー番組の解説者としても活躍。13年には「メッシはマラドーナを超えられるか」という本を上梓した。