男子走り高跳びはリオ五輪銀メダルのムタズエサ・バルシム(25=カタール)が、2メートル38の今季世界最高記録で優勝した。6人が出場したリオ五輪金メダリストは、女子は800メートルのカスター・セメンヤ(26=南アフリカ)、走り幅跳びのティアナ・バルトレッタ(31=米国)、円盤投げのサンドラ・ペルコビッチ(26=クロアチア)と全員が優勝したが、男子は3人全員が3位以下と良いところがなかった。

 リオ五輪メダリスト3人の対決は、バルシムの圧勝だった。

 2メートル29をバルシムと銅メダルのボーダン・ボンダレンコ(27=ウクライナ)は1回目に成功したが、金メダリストのデレク・ドローイン(27=カナダ)は3回ともクリアできなかった。続く2メートル32をバルシムが1回目に成功したのに対し、ボンダレンコは3回とも失敗。バルシムの優勝があっけなく決まった。

 バルシムは2メートル35をラストチャンスの3回目で跳ぶと、2メートル38の今季世界最高も2回目にクリアして派手なガッツポーズを見せた。

 オスロ大会の今季世界最高は男子走り高跳び1種目のみ。短距離・跳躍の記録が出にくい大会だったが、バルシムは大会記録の2メートル37も更新した。2メートル45の世界記録保持者、ハビエル・ソトマヨル(キューバ)が1989年に跳んだ高さである。

 「2メートル38が今日のターゲットだったから、ミッションは成し遂げられたかな。28年前の記録を破ってコーチも大喜びしてくれた。前半はなかなかシャキッとしなかったけど、2メートル33から目が覚めたんだ」

 2メートル43の世界歴代2位記録を持つバルシムにとっては、世界新記録をイメージできる大会新だったようだ。

 女子800メートルはセメンヤが1分57秒59で優勝し、2位にフランシーヌ・ニョンサバ(24=ブルンジ)、3位にマーガレット・ワンブイ(21=ケニア)と、リオ五輪とまったく同じ結果となった。

 セメンヤは16年3月から続いているこの種目での連勝記録を「17」に伸ばした。ダイヤモンドリーグでも5月のドーハ大会とユージーン大会に続き3連勝。昨年も出場した5試合は全勝だった。セメンヤの連勝記録は今後も続きそうな勢いだ。

 女子円盤投げもリオ五輪金メダリストのペルコビッチが66メートル79で優勝し、15年9月から続く連勝記録を「16」に伸ばした。だが、2位のヤイミ・ペレス(26=キューバ)とは55センチ差の辛勝。ペルコビッチ“1強”の時代ではなくなる可能性もある。

 ◆今季の男子走り高跳び

 リオ五輪銀メダリストのバルシムが4月に2メートル35、5月に2メートル36、6月に2メートル37と今季世界最高を更新し、オスロで2メートル38と記録を伸ばした。

 今季世界2位は2メートル31のロバート・グレイバーズ(29=英国)と張国偉(26=中国)で、バルシム以外が軒並み不調に陥っている。その結果2メートル30を2試合で跳んでいる衛藤昂(26=AGF)は、今季世界4位タイにつけている。

 リオ五輪金メダリストのドローインもシーズンベストが2メートル28。オスロでも2メートル25で3位に終わり、「リオ五輪以後、良い感覚が得られていなかった」と明かしたが、「今日は低い高さで良い感覚が出てきた」と手応えも感じられるようになってきた。

 ロンドン世界陸上が行われる8月までにドローイン、ボンダレンコ、張らが2メートル30台後半を出せば、バルシムのひとり舞台とはならない。