ついに壁を越えた。陸上男子の桐生祥秀(21=東洋大)が日本人初の100メートル9秒台をマークした。決勝で追い風1・8メートルの中、9秒98で3年連続3度目の優勝。伊東浩司が98年に記録した10秒00の日本記録を19年ぶりに更新した。京都・洛南高時代に10秒01を出してから4年半。大学最後となる100メートルのレースで、日本陸上界の悲願を成し遂げた。

 桐生が10秒の壁をついに破った。100メートルを47歩で駆け抜け、速報表示は9・99。心の中で「10秒00にならないように」と祈った。電光掲示板に正式タイムが映し出された。「9秒98」。正面スタンド前を躍り回る。どよめく歓声に両手を上げて応えた。「10秒の壁を破れてうれしい。これからは9秒台をコンスタントに出したい」。伊東浩司が10秒00を出してから6845日。日本陸上界の歴史を動かした。

 「やっと4年間くすぶっていたベストを更新することができた」。17歳だった13年4月の織田記念国際で10秒01を記録した翌日。京都・洛南高の部室の黒板に、その年の目標タイムをあらためて書いた。「9秒96」。当時は関係者に「軽々しく口にしちゃだめだ」としかられた。