開幕戦の場所は来年9〜10月に世界陸上が開催されるドーハ。気象条件にも恵まれ好記録が続出した。

 男子走り高跳びのムタズエサ・バルシム(カタール)が2メートル40で、同200メートルは20歳のノア・ライルズ(米国)が19秒83で制した。(26=カタール)の2メートル40、同三段跳びのパブロ・ペドロ・ピカルド(24=キューバ)の17メートル95など、8種目で今季世界最高が誕生。そのうち男子400メートル障害のアブデルラーマン・サンバ(22=カタール)の47秒57、女子円盤投げのサンドラ・ペルコビッチ(27=クロアチア)の71メートル38は、2010年に発足したダイヤモンドリーグでの歴代最高記録だった。

 また、男子やり投げでは全ての大会を通じて史上初めて、3人が90メートルを超える戦いが演じられた。

 歴史的な快挙は3人全員がドイツ勢だったことも特筆される。

 男子やり投げはトーマス・レーラー(26)が2投目に91メートル78を投げ、1回目に91メートル56を投げたヨハネス・フェッター(25)を逆転。アンドレアス・ホフマン(26)も3回目に90メートル08と大台に乗せ、史上初の同一大会での3選手90メートル台が実現した。

 優勝したレーラーは昨年のゴールデングランプリに来日したが、感情を表に出さないタイプ。今回も自己記録ではなかったためか、やりが90メートルラインを超えたことを確認してもリアクションは控えめで、左手の人差し指を頭上に挙げた程度だった。

 だが、3人そろってインタビューを受けたときはレーラーも若干興奮ぎみ。

「今日はグレートな日になった。我々はチームで移動してきたし、練習も一緒に行ってこの試合に臨んだんだ。モチベーションをつねに上げられる」。

 一昨年のリオ五輪はレーラーが、昨年のロンドン世界陸上はフェッターが金メダルを獲得した。同じドーハ開催の来年の世界陸上でも、3人は表彰台独占を狙うはずだ。

 地元カタール勢も男子2種目に優勝して会場を盛り上げた。

 男子走り高跳びに2メートル40の今季世界最高で優勝したバルシムは、2012年から五輪&世界陸上のメダル常連選手。昨年のロンドン世界陸上ではついに金メダルを獲得した。

 2メートル40以上を跳んでいる選手は複数いるが、ケガなどもあって長期間そのレベルを維持できない。バルシムは今大会で早くも、6シーズン連続2メートル40以上をマークしたことになる。

 男子400メートル障害ではサンバが47秒57で圧勝した。2位との1・51秒差は、ダイヤモンドリーグでも珍しい大差。2015年に西アフリカのモーリタニアから国籍を変更した若手は、昨年もこの大会で優勝して世界を驚かせたが、今回の記録で来年の世界陸上優勝候補の1人になった。

 バルシムは「カタールにも偉大な才能がたくさん現れてきた。サンバもハルーン(400メートル2位のアブドーラ・ハルーン)も素晴らしいパフォーマンスだった」と、来年の地元勢の活躍を予言するようなコメントをしている。

 男子200メートルはノア・ライルズ(20=米国)が19秒83の大会新記録で優勝。昨年の世界陸上金メダリストのラミル・グリエフ(27=トルコ)は序盤こそリードしたが、100メートル付近でライルズに並ばれ後半で引き離されての3位。リオ五輪銀メダルのアンドレ・ドグラス(23=カナダ)は昨年の故障からの回復が不十分なのか、6位と振るわなかった。

◆今季の男子200メートル

 3月に20歳のクラレンス・ムンヤイ(南アフリカ)が19秒69の今季世界最高を出しているが、場所が南アフリカのプレトリアで記録の出やすい高地だった。4月の英連邦大会では20秒58の4位と敗れ、実力に疑問符がつく。

 4月に19秒75の今季世界2位記録をマークしたスティーブン・ガーディナー(22=バハマ)は400メートルが専門の選手。昨年の世界陸上銀メダリストで、ダイヤモンドリーグ・ドーハ大会でも43秒87の今季世界最高で優勝した。今後200メートルにも積極的に出てくると面白い存在になる。

 ダイヤモンドリーグ・ドーハ大会で実績のあるグリエフとドグラスが敗れ、400メートル世界記録保持者で200メートルも強いウェイド・バンニーキルク(25=南アフリカ)は、昨秋ヒザに大ケガを負ったと報じられている。

 昨年の世界陸上を最後に引退したウサイン・ボルト(ジャマイカ)の後継者争いは、まだ誰もリードできていない。