男子マラソンの大迫傑(27=ナイキ)は、悲観せず前へ進む。

7日、都内で日本実業団連合からの日本記録報奨金1億円の贈呈式に出席。昨年10月のシカゴでは2時間5分50秒の日本新記録を更新も、3日の東京では4度目のマラソンにして初の途中棄権。その後、初となる公の場でストレートに心境を述べた。

「すごく打ちひしがれているとか、挫折があったとかはない。途中リタイアしたことは僕の陸上人生では多々ある。それと同じ。次に向けて同じ努力をしていくのみ。ポジティブな感情でいる」。もともと超プラス思考。足りなかった部分は伸びシロととらえる。その哲学は注目を浴びる舞台でも同じ。「今は休むのも仕事」。拠点の米国へ帰国後、課題や成長の余地を探していく。

9月15日の20年東京五輪の代表2人を決める「マラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)」へは「万全な状態でスタートラインに立てるように」と話す。冷えた東京マラソンとは正反対の気候が予想される。「単純に夏にどうやったら速くなるのか繰り返していくだけ」と強調した。

東京では中間点過ぎで先頭集団から遅れ、29キロ付近で棄権。その前から棄権を考えたが、人が多く、救護所も見当たらず走り続けたという。「続けることに意味がなかった。必ずしもゴールにたどり着くことがいいとは限らない」。MGC出場の権利を持ち、目標としていた優勝争いも厳しい展開。走りをやめた判断もあり、レースの疲労は「そんなにない」。本当の勝負は半年後だ。【上田悠太】

◆マラソン日本記録突破報奨制度 日本実業団連合から日本記録を突破した選手に1億円が贈られる。本年度の達成者、大迫には4月16日以降に一括で振り込まれるという。使い道について、大迫は未定とした上で「少しでも陸上に生かせるように」。同連合の西川会長によると、来年度になれば新たな寄付金が入るが、現時点の残高は「もう2人分はありません」。男子は2時間6分59秒、女子は2時間21分59秒を切った選手にも1000万円が贈られる。すべての贈呈式は4月16日開催予定だが、大迫は米国が拠点のため出席できるこの日開催された。