痛快なリベンジを果たした。女子マラソンの福士加代子(36=ワコール)が、20年東京オリンピック(五輪)の代表選考会「マラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権を獲得した。2時間24分9秒の8位。

12・6キロ付近で転倒し、35キロで棄権した大阪国際女子から中41日。コンディション面での不安をよそに、16年1月の2時間22分17秒に次ぐ、自己2番目の記録で衰えぬ実力を証明した。女子のMGC出場権獲得者は計14人となった。

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福士は恐れなかった。先頭集団に付いた。30キロの給水で海外勢に離されたが、大きく腕を振り、食らい付き、42日前に途中棄権した35キロ付近から息遣いは荒くなった。フィニッシュすると手をたたき、険かった表情が笑顔に変わった。MGCの盾を受け取ると「いただきまーす。やっと取ったわ。疲れた」と“福士節”をさく裂させた。

大阪国際女子では転倒して流血。その後、途中棄権した時に永山監督から「名古屋行くぞ」と伝えられた。もう36歳。時間もない。その医務室では「俺、MGC取れるかな」と弱音を吐いた。レース後3日間は「脳振とうかな」と違和感があった。むち打ち、打撲や外傷の痛みは1週間後で消えたが、転倒対策に「でんぐり返し」練習までした。天真らんまんなイメージの裏で不安だらけだった。

そんな2週間前。携帯電話が鳴った。親友の瀬川麻衣子さん(36)だった。「緊張してきた」と本音を言った。瀬川さんとは今も一緒に旅行に行く仲。「また旅行、行きたいね。歳もいってるんだから、そこそこに頑張りましょう。無理すんなよ」と伝えられた。張り詰めていた緊張の糸。それをほぐす、親友ならではの言葉に「じゃあどこで最後、頑張るんだよ」と笑った。たわいない40分間で、自然と前向きになれた。

MGCは「1等賞とれればいいね」。ワコールにはMGC権利を持つ安藤、4月のロンドンで権利獲得が有力視される一山もいる。永山監督は3人を一緒に練習させる方針を示し「ミニMGCとして競いながら本番をイメージさせたい」。日本陸上界初の5大会連続五輪へ進む。【上田悠太】