天才少女が低迷を脱しそうな気配だ。出雲陸上が21日、島根県内であり、16歳で12年ロンドン・オリンピック(五輪)女子400メートルリレー代表となった土井杏南(23=JAL)が女子100メートル決勝で大会新となる11秒68(追い風0・8メートル)の2位。昨年の日本選手権女王・世古に0秒16先着した。「苦しい思いも痛い思いもたくさんした。いろんな人から復活と言われるが、すべて進化の過程の1つだと思っている」。

埼玉栄高2年だった12年に11秒43の高校新記録を樹立し、ロンドン五輪は日本陸上界で戦後最年少出場。その後はケガに苦しみ、世界選手権も五輪も出場はない。昨年は体の不調もないのに日本選手権の参加資格すら満たせなかった。今大会も繰り上げでの出場。それが「この記録も満足していない」と今秋の世界選手権の参加標準記録(11秒24)に届かず、悔しがった。

昨夏の南部記念。12秒14に沈んだ。「先が見えない。何かしないとこのまま終わっちゃう」。直後のサブトラック。涙ながら電話を手にし、高校の恩師・清田浩伸監督に再び指導を頼み込んだ。崩れていた体のバランスを修正するなど復調。師からの「お前は天才なんだから」との言葉も励みになり、失った自信も取り戻す。これから伸び悩んだ鬱憤(うっぷん)を吹き飛ばしいく。【上田悠太】