鉄紺の新星が、その1秒をけずりだす。学法石川(福島)出身の東洋大・松山和希(1年)は、東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)で衝撃デビューを飾る。今月の日本選手権1万メートルで日本新記録を打ち立て、東京オリンピック(五輪)代表に内定した同大の前エース相沢晃(23=旭化成)は、高校、大学で直系の先輩にあたり同郷。共通点が多い憧れの存在だ。09年の初優勝から11年連続で死守してきた3位以内が前回大会で途切れ、巻き返しを狙うチームの起爆剤になる。

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東洋大のエース道を継承する。松山は今大会エントリー選手の出身校で、最多11人を輩出した学法石川で大黒柱を担っただけに、即戦力として大きな期待を背負う。「高校時代は相沢選手の走りをよくテレビなどで見て、憧れを持ってこの大学に入学させていただきました。3、4年生でチームを引っ張る相沢選手のようなインパクトのある走りをできる選手になりたい」と誓いを立て、1歩1歩近づいていく。

コロナ禍に見舞われた中で9、10月に5000メートルの自己ベストを2度更新。13分48秒80は同大エントリー16人中2番目のタイムで、相沢が大学1年時の13分54秒75(箱根駅伝時点)を上回る。駅伝にめっぽう強く、全国高校駅伝で17年は5区3位、18年は3区4位、昨年は1区2位。1月の全国都道府県対抗駅伝でも福島代表で5区1位と快走し、7区の相沢とダブル区間賞を受賞した。大学駅伝デビュー戦となった11月の全日本大学駅伝では、2区7位と上々の走りを見せた。

箱根路では主要区間の2、3区を希望し「1年生で初めてで経験を積むという意味でも、序盤から積極的なレースをして前後の選手に負けないというのと、上級生が多く、今年しか戦えない選手もいると思うので、積極的に勝負を挑んでいけたら」。突っ込んで入り、中盤以降に粘る得意パターンに持ち込む。

「学生最強」と称された相沢は大学3、4年時の箱根で2年連続区間新をマーク。それでもルーキー時代は当日のメンバー変更で出場を逃した。酒井俊幸監督(44)は「卒業生の相沢晃は1年時に箱根駅伝を走っていません。松山がしっかり1年時から走ることで、その相沢の後を追って、将来エースになれるような走りを箱根では経験してほしい」。チームスローガン「その1秒をけずりだせ」を体現し、新たな伝説を築く。【山田愛斗】

◆松山和希(まつやま・かずき)2001年(平13)12月4日生まれ、福島県出身。大田原中(栃木)、学法石川を経て東洋大に進学。16年の全日本中学校陸上競技選手権3000メートルで6位。全国都道府県対抗駅伝は17年に6区区間新、19年に5区4位、20年に5区区間賞。167センチ、50キロ。