悔し涙があふれ出た。東京オリンピック(五輪)補欠の松田瑞生(25=ダイハツ)が2時間21分51秒で優勝を果たした。

23キロ過ぎからの独走で、フィニッシュテープを切る時は、無理やり笑った。ただ、山中監督の胸に飛び込むと、涙が止まらなかった。その胸の中で「過去の自分を超えられず、本当にごめんな」。その直後、優勝インタビュー。涙の理由を問われると「悔しかったです」と一言で言った。

「去年の自分を超えられず、ふがいない走りで終わってしまって、本当に申し訳ございませんでした」。それが、まさに圧勝だった勝者の弁だった。

1年前、この名古屋ウィメンズが大きな分岐点になった。一山麻緒(ワコール)が2時間20分29秒の大会新記録で優勝。松田は1月の大阪国際を2時間21分47秒の自己ベストで制し、つかみかけていた東京五輪切符を逃した。どん底に落ちた。「競技を続けなかったらよかったな」と思う日々が続いたという。「応援や励ましの声があって今のわたしがいると思っています。本当に感謝しています」とも語った。結果だけ見れば、去年の自分には4秒及ばなかった。ただ、強風の条件を考えれば、超えたといってもいい内容ではあった。

13キロ過ぎから2度目のマラソンとなった佐藤早也伽(26=積水化学)と2人で先頭を進む展開。23キロ手前から佐藤が遅れ、松田は歯を食いしばりながら徐々に差をつけていった。

新型コロナウイルスの影響で高地トレーニングができない分、平地で設定タイムを上げて練習を積んだ。「後々、余裕度が全然違ってきた」。最後の最後まで最大限の準備を施し「気持ちの面ではスタートラインに立つ時には100%に合わせることが使命だと思っているので、100%と言いたい」と誓っていた。

インタビューの最後はこう締めた。

「どん底に突き落とされたからこそはい上がれる自分の姿を見て、少しでも多くの方が前向きな気持ちになれるような走りを届けていきたい。また最高の笑顔をお届けできるように、頑張りますので、引き続き応援よろしくお願いします」。強い志で、頂点に立ったが、そう涙目で言った。また強くなって、最高の笑顔を見せる。