故障に苦しんでいた山県亮太(28=セイコー)に笑顔が戻った。

10秒14(追い風0・1メートル)で優勝。2位の小池祐貴(25=住友電工)に0秒12、3位の桐生祥秀(25=日本生命)に0秒16、4位多田修平(24=住友電工)に0秒18の差を付けた。

スタートラインに立った時、名前を呼ばれると、地元・広島のファンから一際、大きな拍手が巻き起こった。会場の期待を大きく背負い、「背中を押してもらったような気持ち」。号砲とともに、絶好のスタートを切った。中盤でもグッと伸びて、逃げ切った。まさに自己ベスト10秒00を出した頃を、彷彿とさせる勝ちパターンだった。レース後は白い歯がこぼれた。

過去2年は故障の負の連鎖に苦しんでいた。19年は腰を痛め、右足首の靱帯(じんたい)も断裂。昨年は右膝を2度、痛めていた。五輪が1年延期となった21年に復活を予感させる快走だった。

山県は「本当に地元のレースで勝ててほっとしています。(ライバルに勝ち)これからも何回も一緒に走ることがあると思いますが、自分はタイムを狙い、勝負にも勝てるように頑張りたい」。東京五輪の参加標準記録10秒05には届かなかったが、復活の手応えと自信をつかんでいた。今後へ向けては「10秒05」とタイムの目標を述べた後、「しっかりと日本記録を目指して頑張りたいと思います」と続けた。