伝統校が大学3大駅伝の1つ、出雲路に初挑戦だ。2年ぶり開催の第33回出雲全日本大学選抜駅伝(10日、午後0時5分スタート)に北大が初出場する。1923年(大12)に遊戯部から名称を改め陸上部として創部。全国舞台は17年の全日本大学駅伝以来となる。今年の北海道地区は出場2枠で、7月の予選会2位となり、1位の札幌学院大とともに単独チームで臨む。

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北大の選手たちが初の出雲駅伝に挑む。大学3大駅伝の1つと称され、関東圏を中心に全国の強豪20チームが集う。9月の日本学生対抗選手権1500メートルで3位の中心選手、キャプテン高橋佑輔(4年)は「駅伝という団体スポーツで全国というのは僕自身も初めてのこと。緊張はすると思うが、自分の走りをしたい」と気持ちを高めた。

本来、北海道は学連が選抜チームを結成して参加してきた。昨年は新型コロナウイルスの影響で大会中止となり、今年は19年の道学連選抜の成績(12位)が引き続き考慮され、18年以来の代表枠が1枠増の2枠に。地区出場枠が2枠になると単独チーム2校が選考され、7月の北海道予選で2位の北大は、1位札幌学院大とそろって出場権をつかんだ。

出雲切符獲得後、夏場は、緊急事態宣言発令で全体練習はほぼできなかった。河川敷周辺を走るなど個人練習が多かった。その中で8月の東京五輪マラソンで刺激をもらった選手もいる。宮瀬陸(3年)は給水ボランティアに参加。「一瞬だったんですけど、躍動感とか、走りの迫力があった」。金メダルを獲得したエリウド・キプチョゲ(36=ケニア)や、日本勢最高6位の大迫傑(30)ら世界トップランナーの走りに感銘を受けた。

全国の舞台は17年の全日本大学駅伝(24位)以来になる。奥村日向(3年)は「楽しんで、少しでも爪痕を残せたら」。瀧沢一騎監督(43)は「北海道の代表として出る。選手には頑張ってもらいたい」と話す。大学院2年で学生ラストイヤーの金綱航平は「とても幸せなこと。今まで関わってくれた方に感謝を示す走りができれば」。それぞれの思いを胸に緑のタスキをつなぐ。【山崎純一】

◆北大陸上部の歴史 今から143年前にさかのぼる。西南戦争の翌年、前身の札幌農学校の開校2年目の1878年(明11)6月1日、現在の北海道庁赤レンガ庁舎(中央区北1西4)近くで、日本学生陸上発祥とされる第1回「遊戯会」が初開催された。日本で最初の学校運動会と言われ、同じく日本で最初の学生陸上競技会に該当するとされる。

以来、毎年5~6月に実施され、札幌の年中イベントに発展。競技種目は縄跳び、高跳び、二人三脚、パン食い競走の起源とも言われる「食菓競走」などがあった。その後、北海道帝国大となり、1920年ころ「見せ物として競技するのではなく、記録を重視して競技を極めたい」と、遊戯会を運営していた遊戯部内で不満の声が大きくなり、曲芸のような競技を取りやめた。

1922年10月の第39回遊戯会を最後に、翌23年に「遊戯部」から「陸上競技部」に名称を改め、部活動として競技に打ち込むようになった。全日本大学駅伝は77年から13大会連続を含め、17年まで21度出場。71年の第2回大会で最高12位をマークした伝統校で、その歴史は深い。

◆出雲駅伝 全日本大学駅伝、箱根駅伝と並ぶ大学3大駅伝の1つ。89年から開催され、94年から現在の名称に。地区学連選抜チームを含む20チームが出場し、出雲大社正面鳥居前から出雲ドーム前の6区間45・1キロを走る。大会記録は15年青学大の2時間9分5秒。国立大の出場は鹿屋体大、名大、広島大に続き北大が4校目、旧帝大では2校目となる。北海道からは通常、道学連選抜が出場するが好成績により2枠に増えた場合は大学単独で2校が出場。18年に札幌学院大、札幌国際大が代表になった。道勢過去最高は17、19年の道学連選抜の12位。

▽OB熱烈エール

出雲駅伝初出場おめでとう!

私が現役の頃、先輩の前では「全国目指します」なんて言っていましたが、正直、出雲駅伝や全日本大学駅伝出場は夢のまた夢でした。当時は札幌学院大、北海道教大が2強でそこから少し差があって北大という状況。出雲駅伝の北海道学連選抜チームもこの2校からほぼ選ばれていました。一番少ない時でパート員は11人。それでも、五輪マラソンコースになるなんて夢にも思わなかった大学構内を晴れの日も雨の日も雪の日も走り込み、バイト代をためて首都圏の大学記録会に挑んでいたのを昨日のことのように思い出します。

昨年から大学の方針もあり活動自体が難しかった時期もあったと瀧沢先輩(監督)から聞いています。走ることのできる喜びを胸に、出雲路を思いっきり楽しんで駆け抜けろ!北大ファイト!【東京写真映像部 河野匠(04、05年北大陸上部中長距離パート長)】

○…札幌学院大は単独チームでは18年以来2度目の出場で上位進出を狙う。前回1年生で1区を走ったエースのローレンス・グレ(4年=札幌山の手)が中心。エントリー10人中1年生4人、2年生が3人と若いチームで勝負する。鹿内万敬(かずのり)監督(48)は「多くの選手が初の全国になる。彼らが急成長している部分もあるので、そこに期待して積極的な走りを見せたい」と意気込んだ。全日本大学駅伝(11月7日、熱田神宮~伊勢神宮)に4大会連続28度目の出場を決めている道内の強豪が、まずは出雲路で全国に挑む。