陸上の東日本実業団が19、20日の2日間、埼玉県熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で開催される。代表選考競技会ではないが、ロンドン五輪最終選考会の日本選手権(6月8~10日)への重要なステップと位置づけて候補選手たちが出場する。

 末続慎吾(31=ミズノ)の国内主要大会への復帰戦。日本選手権参加標準記録の10秒45(100メートル)と21秒00(200メートル)を切ることができるかどうかが焦点だ。

 2003年パリ世界陸上200メートルで銅メダルを獲得した末続。日本のスプリンターとして歴代最高の戦績を残したが、北京五輪400メートルリレー(2走)で銅メダルを取った2008年を最後に休養に入った。

 昨年10月の熊本市記録会100メートルを10秒87で走って競技会に復帰。今季は4大会連続となる五輪代表入りを目指すことを表明し、4月28日にアメリカで100メートルに出場した。だが、追い風参考記録にもかかわらず10秒92と、自己記録(10秒03)に遠く及ばない低調なタイムに終わっている。

 末続は日本選手権の参加標準記録を破っていないため、現時点で出場資格がない。強化指定競技者からも外れているので陸連推薦という方法もとれないという。東日本実業団で日本選手権標準記録を破れなかった場合、ロンドン五輪への道は閉ざされてしまう。

 末続抜きで考えても男子100メートルと200メートルはレベルが高い。高平慎士(27=富士通)、高瀬慧(23=富士通)、川面聡大(22=ミズノ)と3人の五輪標準記録突破者がエントリー。そこに北京五輪100メートル代表だったの塚原直貴(27=富士通)や、2009年ベルリン世界陸上400メートルリレー4位入賞メンバーの藤光謙司(26=ゼンリン)らが加わってし烈な争いになりそうだ。

 女子5000メートルも激戦種目。絹川愛(22=ミズノ)、吉川美香(27=パナソニック)ら、今大会最多の5人の五輪標準記録突破者がエントリーした。北京五輪代表で1万メートル日本記録保持者の渋井陽子(33=三井住友海上)も、復調すれば標準記録を破る力がある。

 日本記録保持者は末続、渋井も含めて9人がエントリーしている。

 跳躍では男子棒高跳びの沢野大地(31=富士通)が期待できそう。4月に5メートル72の五輪A標準を跳んでいる。シーズン初戦としては自己最高記録だ。自身の持つ5メートル83の日本記録は2005年に出したもの。7年ぶりの記録更新に沢野自身も手応えを感じている。

 男子800メートルの横田真人(24=富士通)の動向も要注目。16日のテグ国際で1分46秒19と五輪B標準を突破し、自身の日本記録にも0.03秒と迫った。今大会で五輪A標準の1分45秒60を狙うか、それとも調整レースとして日本選手権に合わせるか。

 男子走り高跳び日本記録保持者の醍醐直幸(31=富士通)は、足首の故障からどこまで復調しているか。男子砲丸投げ日本記録保持者の山田壮太郎(26=富士通)も、冬期から脚の故障を抱えていたため調整が遅れている。2人とも今大会から調子を上げてくるだろう。

 女子400メートル日本記録保持者の千葉麻美(26=東邦銀行)が、昨年の出産を経て今春競技会に復帰した。5月3日の静岡国際では55秒65とまだ元のレベルに戻っていないが、4×400メートルリレーでは53秒台で走ったという。今大会で53秒台を出せば、日本選手権で優勝争いができる。

 男子長距離種目にも注目選手が多い。

 佐藤悠基(25=日清食品グループ)は1500メートルにエントリー。昨年も今大会の1500メートルで日本人トップの3位となり、日本選手権では本職の1万メートルで初優勝した。「1500メートルで速い動きをしておくと余裕ができる」。今季も同じパターンで五輪最終選考会に臨む。

 “新山の神”柏原竜二(22=富士通)は5000メートルに出場する。箱根駅伝後は休養主体のトレーニングを行い、練習強度を上げたのは3月以降。「オリンピックを狙う土俵に上がること」が今季前半の目標だ。

 4月21日の兵庫リレーカーニバル1万メートルは28分50秒97と低調だったが、5月12日のゴールデンゲームズinのべおかでは28分25秒37と自己記録に4秒強と迫った。東日本実業団では5000メートルでスピードを強化し、日本選手権で五輪B標準の28分05秒00を狙う。