<全国高校バスケット選抜優勝大会:札幌山の手96-46東京成徳大高>◇女子準決勝◇27日◇東京体育館

 3冠に王手だ!

 高校総体、千葉国体で2冠を達成した札幌山の手が96-46で3年連続準Vの東京成徳大高(東京)を今大会3試合目のダブルスコアで下し、道勢初の決勝進出を決めた。司令塔の町田瑠唯主将(3年)が、意表を突くパスを繰り出しゲームメーク。エース長岡萌映子(2年)の大量33得点をお膳立てするなど、161センチの小さな大黒柱がチームを勝利に導いた。今日28日の決勝で、女子史上8校目の3冠を懸け、高校総体準優勝の中村学園女(福岡)と対戦する。

 歴史的瞬間が近づいてきた。札幌山の手が町田の振るったタクトで3冠に王手をかけた。ノールックパスにピンポイントパス。33得点を挙げたエース長岡のゴールの多くは町田を経由した。「今日は外がダメだったので、中(インサイド)でバスケをするように意識した」。司令塔の状況判断で、昨年まで3年連続準Vの強豪をダブルスコアで退けた。

 旭川市を離れ寮生活を送る町田は、高校で初めて主将を経験した。名門で大役を務める重圧を感じていた。そんな彼女を支えたのは、母ルミさん(45)との手紙だった。町田が今大会に向け、北海道を出発する3日前。ルミさんの元へ一通の手紙が届いた。「どういうふうに自分が引っ張ったらいいか分からない」。迷う町田に北京五輪ソフトボール金メダリストの上野由岐子投手(28)の言葉を引用した。周囲へ思いやりの心を持つことが大切だという内容の手紙を送った。

 それはプレーにも表れた。ここまで大差で勝ちすすんでいるように見えるが、納得できるプレーができず、チームの歯車は微妙に狂っていた。3回戦の山形商(山形)戦後、3年生が話し合った。町田も母の手紙の通りに、周囲を生かしたプレーを心がけると、そこからチームの流れるような攻撃がよみがえった。準々決勝の福岡大若葉(福岡)戦からは町田を起点にした攻撃が機能。長岡は「(今日は)攻めてたし、パスがすごい良かった」と主将に感謝した。今日の大一番を前に不安要素は消えた。

 3冠は目前だ。決勝の相手は、高校総体決勝でも戦ったライバル中村学園女(福岡)。上島正光コーチ(67)は「3冠とか優勝とかは意識していない。良い試合をするだけ」と選手の思いを代弁した。道勢初の偉業へ今日正午、札幌山の手は東京体育館のコートに立つ。【石井克】