11年世界選手権銀メダルの小塚崇彦氏(28)が、ジャンプの特徴を解説する最終回はアクセル。6種類の中で唯一、前向きで踏み切る。ジャンプはすべて後ろ向きに着氷するため、アクセルだけが180度=半回転多く回ることになる。右足を振り上げて左足で踏み切るアクセルは、19世紀末にアクセル・パウルゼン(ノルウェー)が考案した。

 クワド(4回転)アクセルの基礎点は最も高い15・0点だが、成功者は誰もいない。トリプルアクセル(3回転半)を、男子で初めて成功させたのは78年世界選手権のバーン・テイラー(カナダ)。五輪初の成功者は、84年サラエボ五輪で銀メダルのブライアン・オーサー(カナダ)で、現在は羽生のコーチを務める。国際スケート連盟(ISU)公認で4回転半に成功すれば、歴史に名を刻める。

 小塚氏 練習している選手はいます。5回転までは物理的にはできる、でも生体力学的にはあやしいといわれています。人間の脳が持たないんじゃないか。ただ4回転半をやればいいだけじゃない。プログラムの中に4回転半を組み込まないといけない。

 現在の男子は、フリーに4回転を3種4本、4種5本と組み込む時代だ。競技会で上位を狙うなら、いくら最も基礎点が高い4回転半でも1本では足りない。

 小塚氏 4回転、4回転、4回転、4回転半…。そろそろ人間の体が危ないんじゃないか。ギネス(記録)のために4回転半をおりて、他の演技がバラバラというのならば、ありかなと思うが…。もしくはISU公認のジャンプ大会をやります、跳べば公認されますという状況だったら。1本だけ単発で跳ぶジャンプ大会なら4回転半はなしではないが。

 テイラーが3回転半に初成功してから39年。4回転半の成功者が出るにはもう少し時間がかかりそうだ。【取材・構成=益田一弘】

(この項おわり)

4回転ジャンプの基礎点
4回転ジャンプの基礎点