ラグビーの「リポビタンDチャレンジカップ2017」が6月24日、東京・味の素スタジアムで行われた。相手は世界ランキング3位の強豪アイルランド。結果は13-35で敗れた。6月17日にも静岡・エコパで対戦していたが、その時は22-50での敗戦だった。

日本対アイルランド 前半、トライを決める日本CTB松島幸太朗(6月24日)
日本対アイルランド 前半、トライを決める日本CTB松島幸太朗(6月24日)

 アイルランドとの初戦は、非常に力の差を見せつけられる形となった。2016年9月に日本代表のヘッドコーチがジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)になって以降、キックでの攻撃が目立つようになった。キックを多様することで「アンストラクチャー(陣形が崩れた状態)」を意図的につくり出す、ニュージーランドスタイルのラグビーを貫いている。2戦目のアイルランド戦は「前回の初戦のアイルランド戦より、バックスリーがいる位置に蹴れた」とSO小倉順平選手がいうように、試合内容としての手応えはあった。選手たちは、今の戦法に対して前向きだった。

 前日本代表のエディ・ジョーンズHCが「ジャパン・ウェイ」を掲げて戦ったことは、今もなお記憶に新しい。日本人の敏捷性や持久力、粘り強さといった特長や性質を生かした戦法を全面に出し、2015年のW杯では強豪・南アフリカを破るなど歴史的勝利へと導いた。あの一戦は今でも鮮明に思い出すことができるし、そこへ至るハードな練習はよく伝えられるところだった。あの時は「成功」だった。しかし、日本はもう「ノーマーク」の国ではない。現状維持ではなく進化、このチャレンジに誇りを持って突き進んでいく。次のチャプターへ進む時が始まっている。

 WTB山田章仁選手は「この一戦は大切な試合になる」とアイルランド戦を前に話していた。対するアイルランドのシュミットHCからも「山田には注意を払っている」「スピードのある選手」と警戒されていた。そんな評判に違わず、ボールを持ってからのスピードを生かしたトライには、山田選手らしさを感じた。前回のW杯を経験した選手と新たなメンバーが融合し、今また進化しようとしている。

 世界ランキング11位の日本だが「今の戦法はよくない、変えた方がいい」。こんな話もよく聞く。トライを挙げた山田選手は「世界ランキングの差を感じた」と話した。「負けは負け」なのかもしれない。アイルランドのシュミットHCは「勝つ、負けるは大事なことかもしれない。しかし、勝ってもその中の課題を見つける。負けても課題を見つける」と話していた。

アイルランド戦後、ファンにあいさつする堀江(右)ら日本代表メンバー(6月24日)
アイルランド戦後、ファンにあいさつする堀江(右)ら日本代表メンバー(6月24日)

 私たちは、選手とともに一喜一憂できるファンだ。そこがまたスポーツの楽しみである。選手たちがいてこその試合であり、スポーツである。先日の味スタも約3万人の観衆を集めた。いつか、どんな試合でも満席になり、スポーツの価値、アスリートの価値がさらに根付いていくことを願う。スーパーラグビー、トップリーグ、セブンズ。まだまだ、面白い試合は続いていく。そして2019年にはラグビーW杯がやってくる。こんな素晴らしいことがあるだろうか。世界中の素晴らしい選手やチームが日本に集結するのだから。

 次回の国際マッチは11月4日、神奈川・日産スタジアムで世界ランキング4位の「ワラビーズ」ことオーストラリアが相手だ。きっと日本代表は新たなスタイルに自信をつけていくことだろう。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)