東京2020大会の後半戦、パラリンピックが24日にスタートする。世界160カ国から約4400のアスリートが集まり、来月13日まで22競技539種目が行われる。競泳、陸上、そして新競技のバドミントンなどにメダル有力な日本選手も多く、オリンピック(五輪)同様に日本中が盛り上がるはずだ。

ただ「パラのころになれば落ち着くだろう」と思っていた新型コロナの感染拡大は収まるどころか激しくなるばかり。聖火リレーをはじめ、多くのイベントが制限され、中止された。それでも、大会は迫る。

22日には大会組織委員会が主催する文化プログラム「ONE-Our New Episode」の「MAZEKOZEアイランドツアー」が配信スタート。映像イベントの総合構成、演出、総指揮を務めるのは俳優の東ちづるさんだ。

イベントには40人以上のアーティストが参加。ジェンダー、年齢、国籍、障がいの有無など様々な個性を持つ参加者が9つの島でパフォーマンスを披露。視聴者は島を巡りながら自分と「違う」人たちの存在に気づくというもの。その「気づき」が重要なのだ。

東さんは俳優業のかたわら、30年ほど前からボランティアで障がい者や性的マイノリティーの人たちと触れ合ってきた。2011年には「Get in touch」を立ち上げて理事長に就任。「まぜこぜの社会」を目指している。

「まぜこぜ」の意味を聞くと「実は、まぜご飯からなんです」と笑った。「まぜご飯って、それぞれの食材の良さを引き立たせる工夫がされていて、それを混ぜるからおいしい。それぞれ良さを生かし、混ぜるからさらに良くなる。決して『ごちゃ混ぜ』ではないんです」と説明した。

組織委の橋本聖子会長によれば、今大会の日本選手団団長でもあるJPCの河合純一委員長は「ミックスジュースではだめ、フルーツポンチでないと」という思いだという。それぞれの果物のおいしさが際立つフルーツポンチ。個性を消して混ぜ合わせるミックスジュースではないという。

「共生社会」「多様性社会」を進めようとすると、既存の価値観の中で考える「ごちゃ混ぜご飯」や「ミックスジュース」になりがち。大切なのは、それぞれの「個性」や「らしさ」。認め合ったり、支え合ったりすることより前に、まずは知ることが必要だ。

五輪のスケートボードは既存の価値観とは違う世界を見せてくれた。国や順位に関係なく、選手たちは常に笑顔だった。それを「知る」ことで五輪は変わる。これまでの五輪競技と違っても「それも、いいね」と受け入れ、仲間に迎え入れることが「共生」になる。

「MAZEKOZEアイランドツアー」では、車いすダンサー、全盲の歌手、日本一小さな手品師、こびとレスラー…、様々な個性のあるアーティストがパフォーマンスを展開する。見て、楽しみ、気付いてほしい。それは、パラリンピックも同じ。「知る」ことや「気付く」ことの「きっかけ」になればと思う。

「ごちゃ混ぜなご飯」ではなく「まぜご飯」。そして「ミックスジュース」ではなく「フルーツポンチ」に、この社会がなれば素敵だ。100年近く前、童謡詩人の金子みすゞが書いた「私と小鳥と鈴と」。それぞれの個性を知り、認め合うことで新しい世界が広がる。「みんなちがって、みんないい」。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

東京2020公式文化プログラム「MAZEKOZEアイランドツアー」試写会に出席した、左から東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会古宮正章副事務総長、YANO BROTHERSの矢野マイケル、矢野デイビット、矢野サンシロー、マメ山田、東ちづる、平原綾香、三ツ矢雄二(2021年8月撮影)
東京2020公式文化プログラム「MAZEKOZEアイランドツアー」試写会に出席した、左から東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会古宮正章副事務総長、YANO BROTHERSの矢野マイケル、矢野デイビット、矢野サンシロー、マメ山田、東ちづる、平原綾香、三ツ矢雄二(2021年8月撮影)